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Story.13 ページ14

その日、泣き明かした私は疲れて寝てしまっていた様だった。

目が覚めると見慣れた自室で寝ていて、迅が運んでくれたんだろうということが分かる。

上半身を起こすと、鈍い頭痛。

再びベッドに倒れ込んで、額に手を当てる。

けれどそれは、疲労とストレスで昨日まで感じていたそれとは明らかに違い、きっと泣きすぎによる頭痛がまだ残っているのだと思った。


玉狛の自室は、何年も暮らしているにも関わらず、驚く程物が少ない。思えば初めから、この場所自体に執着はなかったのかもしれない。


私は今度こそベッドから起き上がると、少しホコリを被った机へ足を向けた。

そして、そこに伏せておいて置いた写真立てを手に取りホコリを払う。

少し薄汚れた写真の中で作り笑顔をカメラに向ける私の家族達。

……あの日、崩れた瓦礫の中から掘り出した、家族写真だ。


写真の中の家族の顔を見てふっと笑顔が漏れる。


……もう大丈夫。


私は写真立てを、今度は写真が見えるように立てて、自室を後にした。



*



顔を洗って、歯を磨いて、服を着替えて、髪を整えて。


身なりを整えて向かったのはリビングだ。


カレーの匂いが漂う。昨夜の残りの小南特製カレーが今日の朝食らしい。


けれど、ダイニングテーブルには、私の座る場所がなかった。


その代わり、私の席を占領していたのは、見慣れない黒いフードの人物。


「ちょっと、誰よ」


思わず口に出た私の言葉に、その人物が顔を上げると見覚えがある。

アフトクラトルの大規模侵攻で私が相手をした、若い男の戦闘員だ。

スプーンは使い慣れていないようで、行儀の悪い持ち方をしながら、手はとめずにこちらに顔だけ向ける。


ピキっと、こめかみに血管が浮出す音がした気がした。



「ちょっと!なんでコイツがここにいるのよ!
しかもそこ私の席!何で皆止めないの!」

「だってアンタ、玉狛にいるんだか本部にいるんだか分かんないんだもの。悔しいなら連絡のひとつでも入れたら?」

「小南に至極真っ当なこと言われるとちょっと腹立つんですけど……」

「いやいや、小南先輩もさっきまで「なんでコイツがここにいるのよ!」ってごねてたじゃないですか」

「なっ……!とりまる!」

「……アンタ、それでよく私に対して諭すような言葉吐けたね。カレーまだある?」

「ありますよ、つぎましょうか?」

「京介はやさしいなぁ。で、なんでコイツここにいるの?」

私を無視してカレーを食べる、捕虜を指さした。

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近藤。(プロフ) - 甲賀忍者さん» コメントありがとうございます。根が優しいけどひねくれ者を書きたかったので伝わっているようで何よりです!ヒュースの面倒も迅から押し付けられる予定なので……。楽しみにしておいて下さい! (2022年7月1日 22時) (レス) @page23 id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 失礼します。作品読ませていただきました。主ちゃんの指揮、指導、後輩達への厳しい中にある優しさに虜になりました。正に一騎当千 目上の人にもズバズバ言う所が好きです。彼女にヒュースが誰よりも懐くとSEが言っている…上層部も上級隊員も私も主大好きす! (2022年6月28日 4時) (レス) id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - 竜胆さん» コメントありがとうございます!難しい所ですね。でも迅も大人だったらさらっと流してると思うんですよね、暴言。結局、大人として戦ってる主も迅も大人になりきれてないのだと思います。お互い様ですね笑 そんな中、皆が支え合って助け合える世界であれと願っています (2022年3月28日 15時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ゆうさん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます!私生活が多忙でなかなか更新できませんが、できる限りでがんばりますね!! (2022年3月28日 15時) (レス) @page16 id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - しょうがないんじゃないかなと感じてしまいました。避難するわけではないですけど、迅も迅で夢主のことをもう少し考えてやれば良いのにと思ってしまいました。大人って難しいですね。長々とすみません。これからも頑張ってください。 (2022年3月27日 11時) (レス) id: b5d562abb3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:近藤。 | 作成日時:2021年7月12日 17時

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