最後の審判【ワールドトリガー】

Story.8 ページ9

「木虎」

「はい」


私が木虎の名前を呼ぶと、木虎は返事をするなり三輪に斬りかかる。

ここだけの話、木虎は私の弟子だ。


生意気ではあるが、よくできた弟子である彼女は、戦場において私の意図をよく汲んでくれる。……生意気だけど。


木虎が三輪に斬りかかった瞬間、視界の端、数百メートル離れたビルの屋上がチカッと光る。


それを私が見逃すわけもなく、木虎の頭と胸の辺りをフルガードした。


予想通りに木虎の胸あたりめがけて飛んできたのはイーグレットの弾丸。


……三輪を狩れて、スナイパーの位置を炙り出せて一石二鳥である。


木虎とは言うと、なんやかんやで私のことを信頼しているのか、射撃には目もくれず三輪の首を切り落とす。

ドン！と派手な音が三輪のベイルアウトの合図。私は再びイーグレットを構えてビルの屋上に照準を合わす。


「……奈良坂引きたかったけど古寺だな」


私がスコープを覗くと同時に敵から放たれた弾丸は、射撃で撃ち落とす。そうして続け様に放った2発目の弾丸には手応えがあった。

遠くでベイルアウトの光が見える。古寺を落としたのだ。


そのままスコープ越しにチラリと周辺を見たが、他のスナイパーは見当たらない。


当真が見つかりにくいのはもちろんのこと、奈良坂も先程とは隠れ場所を変えていた。


そもそも、長距離持ちが地面にいることなど稀。それこそ、ボーダー内部ではレイジさんと荒船と私の3人だけである。


その中でも私は、ランク戦の最中の唯我のお守りを通して、近接戦闘中にスナイパートリガーに持ち替えて地面から遠距離を叩く術を身につけた。


何せ、A級上位は曲者揃い。唯我のお守りの真っ最中に、当真の射撃の相手をしながら風間さんと斬りあう事もざらだ。

だが、スナイパーが混ざると人をかばいながらの戦闘は圧倒的にこちらが不利だ。出水の援護があってもキツイ。


そこで、元々スナイパーだった私が地面から狙撃をすることにすると、これが案外良かったのである。

その為、私との戦闘において、スナイパーの高台的有利はあまりない。

全く、あのバカには早く強くなってもらわなきゃ困るのに、私ばかりが小技を色々身につけていっている始末だ。


三輪隊や冬島隊とは何度も戦ったことがあるし、何度も低高度射撃でベイルアウトさせている。


それがわかっているから向こうも無駄撃ちはしてこないため、私がスナイパーへの牽制を担う形になっているのだ。

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