Memory.5 ページ19
兄ばかりを可愛がっていた親父さんが私を本拠地へと呼び戻したことには疑問を感じていた。
けれど、その謎はすぐに解ける。
死穢八斎會の地下室、私が呼ばれた応接間のソファーの上にちょこんと腰掛けていたのは小さな女の子だった。
「A、ウチは男世帯でこの子の面倒を見てやれるやつが居ねぇ。頼まれてはくれねぇだろうか。」
そう言って私に頭を下げた親父さんの態度は、ヤクザが客人にとるそれと同じだった。
兄には完全に家族として接している親父さんが私には客人として接する。血の繋がりのある兄にすらもう何年も家族としての接し方をされていなかった私がそのことに対して思うことは何も無かった。
その少女の名前は“壊理”と言い、親父さんの孫娘だった。
特に断る理由もなかったので快く承諾すると、私は壊理と同じ部屋で生活するようになった。
壊理は個性の制御ができずに実の父親を消してしまったらしい。生まれてきてはならない、ならなかった存在だと母親に言われ、捨てられたそうだ。
しかし、父親や母親……そう呼べる存在すらいない私にはその辛さや悲しさを分かってやることはできなかった。
けれど、壊理に対する気持ちが変わってきたのは私が壊理と生活を始めて数ヶ月がたった頃だった。
壊理の全身についたおびただしい数の切り傷。日に日に弱っていく体力。
そうかと思えばある時には何事も無かったかのように綺麗に治っている傷。
それが兄の仕業であることは明白だった。
多分、私はこの頃まで“サイコパス”と呼ばれる人種だった。唯一私の中にあった感情は劣等感。
だが、他人が死のうとも、喜ぼうとも、泣こうとも何も感じない自分を、常識という仮面を被って“普通の人間”であるように見せかけた。
笑うこと、泣くこと、怒ること。そう周りに見せかける演技をすることはできたが、心からそんな感情を抱いたことはなかった。
そんな私が初めて他人の気持ちを汲み取れた人物が壊理だった。
両親のいない環境、逃げることのできない理不尽な暴力。
そんな壊理の状況を、かつて孤児院にいた頃の自分と重ね合わせた。
このままではこの子の心は私のように壊れてしまう。
……もう私のような人間は出すべきじゃない。
私が守ってやらないと。
何故か純粋にそう思えた私は、この日から壊理に対する態度を変えた。
他人行儀じゃない、妹として接するようになったのだ。
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ニナ(プロフ) - サーが死ぬところガチ泣きしました。ありがとうございます (2021年3月15日 20時) (
レス) id: fec159ffdc (このIDを非表示/違反報告)
Ama(プロフ) - ほんとに泣きました、アニメ見て泣いたのですが、本当に良かったです、！！小説？書くのとてもお上手ですね！！ほんとにここまで泣いたの初めてです、 (2021年1月8日 3時) (レス) id: 06070d74b0 (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ぴのさん» いえいえ！！細かいところまで読んでくれてるんだなーって嬉しかったです！！これからもよろしくおねがいしますね！！ (2019年1月28日 1時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 近藤。さん» ごめんなさい！原作しっかり読んでませんでした……完全に早とちりです……本当にすみません!! (2019年1月28日 1時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ぴのさん» すみません、バブルガールやサーの事務所のメンバーがミリオンと呼んでいるのはわざとです。15巻辺りを読み返していただければ原作でもそう呼んでいる描写がありますので見てみてください！ご指摘ありがとうございました！ (2019年1月28日 0時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：近藤。
| 作成日時：2018年11月30日 12時
