Memory.4 ページ18
少しだけ、私が兄の元を離れて支部を転々としていた頃の生活の話をするならばそれは平凡なものだった。
平凡、世間一般の人と同じような生活をするのは初めてで戸惑うことが多かった。
……いや、少しだけ語弊がある。ヤクザの家で育って世間と同じだったかと言えばそうではなかったかもしれないが、けれど人生の中で“普通”に近い生活をするのは初めてだった。
“人は殺してはいけない”
“暴力を他人に振るってはいけない”
そんな当たり前のこと。
一般常識、敬語、上下関係。
皆が幼い頃から親に教えられ、当たり前のように知っていることを知らなかった私がそれらを必死に学んだのもこの頃だった。
必死に個性の勉強を始めたのもこの頃だった。対人間の練習はできない。けれど、せめて知識だけはと年齢にそぐわない医学の知識を必死に頭に詰め込んだ。
兄に対する劣等感を消したいがために、せめて物質の扱いだけは、と機械、建築、精密機器に至るまでの情報と図面を必死にかき集めて暇な時間はひたすら勉強した。
ニュースやテレビも見るようになった。面白みはさして感じなかったが“一般常識”の知識だけはせめて身につけようと貪るように様々な情報を頭に入れ続けた。
“ヒーロー”というものの存在も知った。けれど奴らの存在は偽善者。世間の中に出て、私の育った環境の異常さを知った今、そこから私を助けてくれなかったヒーローは偽善者というほか、それ以上でも以下でもなかった。
世間のなかでチヤホヤされるヒーローが嫌いだった。
小学校を卒業する頃には私は世間の中に完璧に溶け込んでいた。クラスの中心にいた私は人の中でうまく立ち回ることの出来るだけの常識も身につけた。
“ヒーローが嫌い”
一貫して皆にそう言い続けた私だったが、このぐらいの年頃は、クラスの中心の私が皆と違うことを言ってもカッコイイという認識しかされなかったので荒波は立たなかった。
小学校卒業後、常識というものを身につけて八斎會の本拠地に戻るとそこには兄がいた。
背が伸び、大人と呼ぶのに遜色のなくなっていた兄はいつもマスクを身につけるようになっていた。
驚くほど笑わない。そんな兄には一般常識を教えてくれる人はいなかった。それに加えて私と年が離れている兄に“常識”を刷り込むには、死穢八斎會に来た時には遅すぎた。
兄と一緒に“仕事”に行った時、なんの躊躇もなく人を個性で殺す兄を見て初めて“怖い”と思ったのもこの頃だった。
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ニナ(プロフ) - サーが死ぬところガチ泣きしました。ありがとうございます (2021年3月15日 20時) (
レス) id: fec159ffdc (このIDを非表示/違反報告)
Ama(プロフ) - ほんとに泣きました、アニメ見て泣いたのですが、本当に良かったです、！！小説？書くのとてもお上手ですね！！ほんとにここまで泣いたの初めてです、 (2021年1月8日 3時) (レス) id: 06070d74b0 (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ぴのさん» いえいえ！！細かいところまで読んでくれてるんだなーって嬉しかったです！！これからもよろしくおねがいしますね！！ (2019年1月28日 1時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 近藤。さん» ごめんなさい！原作しっかり読んでませんでした……完全に早とちりです……本当にすみません!! (2019年1月28日 1時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ぴのさん» すみません、バブルガールやサーの事務所のメンバーがミリオンと呼んでいるのはわざとです。15巻辺りを読み返していただければ原作でもそう呼んでいる描写がありますので見てみてください！ご指摘ありがとうございました！ (2019年1月28日 0時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：近藤。
| 作成日時：2018年11月30日 12時
