Memory.3 ページ17
私が兄に手を引かれて連れて行かれたのは1軒の大きな家だった。
塀が高くて窓がない、そんな家。
家の門の目の前までいくとそこには着物を着たおじさんが立っていた。施設以外の人間と殆ど関わったことが無かったので警戒心剥き出しだった私とは違い、そのおじさんの前まで私を連れていくと挨拶をするように促した兄。
これが、私と親父さんの出会いだった。
兄は私の知らない間に何度も施設を抜け出して外へ出ていたらしい。その時に出会った親父さんに私諸共拾ってもらえることになったのだ。
こうして私達は死穢八斎會を“家”と呼ぶようになった。
これまで通っていなかった学校にも通い始めた。だが、勉強は遅れるどころか進んでいた。運動も人並み以上にでき、おまけに顔も悪くなかった。
全て兄、そして私の知らない両親のお陰だった。
このぐらいの年頃というのは単純なもので、性格が悪くとも良い顔、そして良くも悪くもカリスマ性さえあればクラスの中心にいることができた。
そして、私はその全てを持ち合わせていたためどこに行っても気づけばクラスの中心にいた。
けれど、出る杭は打たれる。
私の実家のことが知れるなり一瞬にして私はクラスの中心からイジメの対象へと成り下がった。
「こいつの家、ヴィランなんだってよ」
初めてそんな言葉をかけられた時は殺してやろうかと思った。そんなの私が望んでなったわけではない。
けれど、暴力に怯えることのない日々、美味しい食事、不自由のない暮らし。その全てを提供してくれている親父さんには少なからず感謝していた。
世間一般では疎まれる家。それでも私にとっては居心地のよい場所だった。
だから、親父さんの顔に泥を塗る訳にはいかないと必死に耐えていた。
だが、そんな我慢もいつしか限界を迎え、私は全国の死穢八斎會の土地を転々とするようになった。
兄と疎遠になり始めたのもこの頃。兄からは感謝と言うより崇拝に近い親父さんへの敬意を感じていたが、もう私に柔らかい笑顔を向けてくれることはほとんど無くなっていた。
親父さんが可愛がっていたのは兄だった。私はおまけ。そのことに対しての不満は無かった。今まで私は兄に知らず知らずに甘えていた。助けられてきた。
だから、兄が幸せならそれでいい。反抗期を終えて少し考えが大人になった私はそう思いながら死穢八斎會の本拠地を後にした。
そして私が本拠地へと戻ってきたのは数年後、私が中学一年生の時だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 987人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ニナ(プロフ) - サーが死ぬところガチ泣きしました。ありがとうございます (2021年3月15日 20時) (
レス) id: fec159ffdc (このIDを非表示/違反報告)
Ama(プロフ) - ほんとに泣きました、アニメ見て泣いたのですが、本当に良かったです、！！小説？書くのとてもお上手ですね！！ほんとにここまで泣いたの初めてです、 (2021年1月8日 3時) (レス) id: 06070d74b0 (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ぴのさん» いえいえ！！細かいところまで読んでくれてるんだなーって嬉しかったです！！これからもよろしくおねがいしますね！！ (2019年1月28日 1時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 近藤。さん» ごめんなさい！原作しっかり読んでませんでした……完全に早とちりです……本当にすみません!! (2019年1月28日 1時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ぴのさん» すみません、バブルガールやサーの事務所のメンバーがミリオンと呼んでいるのはわざとです。15巻辺りを読み返していただければ原作でもそう呼んでいる描写がありますので見てみてください！ご指摘ありがとうございました！ (2019年1月28日 0時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：近藤。
| 作成日時：2018年11月30日 12時
