Story.4 ページ4
「ほんとになんで別れたんですかアンタ達。」
私を見てまたため息を吐いた玄野に目を合わせることもせず、ぽつりと呟く。
「……仕事が入ったって言ったでしょう。察してよ。」
そんな私の言葉を聞いて少し考えた後、玄野が立ち上がり私の胸ぐらを掴む。
「まさか……。」
殺気立った玄野からなお目を逸らす。漏れたのは自身への嘲笑だった。
「……馬鹿よね、いつものキスに毒を混ぜれば良かったのに。出来なかった。
恋人のままじゃ殺せないと思った。でも、恋人じゃなくなったら……近づけなくなってしまったら殺せない。
……ねぇ玄野、私はどうすればいい？」
そんな私の様子を見て玄野は私の胸ぐらから手を離して、頭をガシガシ掻きながら再びソファーへと座る。
「……依頼主は。」
それでもなお殺気立った、先程より数段低い声で下を向いたまま私に尋ねた玄野にクッキーをかじりながら答える。
「……言えない。仕事だから。
でも……もう引き返せない。
……いつもなら躊躇なく人を殺すんだけど。」
廻を殺さなければ私が依頼主に殺られるし、それが嫌なら廻を殺さないといけない。
殺さなければ。
俺と仕事どっちが大事なんだ、なんて遠い昔に誰かに言葉を投げかけられたことがあった。
“子どもじゃないんだから仕事に決まってるでしょう。”
そんなことを言いながら護身用の銃で躊躇なく眉間に弾を撃ち込んだことがあった。
不意にそんなこともあったな、なんて思い出しながら、そうだよ、仕事の方が大事だ、なんて刺青を撫でながら自分自身に言い聞かせる。
……そもそも、暗殺依頼のターゲット自体、玄野にだけは言うべきではなかったのに。
脳が溶けてる。正気じゃない。言って、私はどうして欲しかったのだろう。
考える時間が欲しい。時間が止まればいいのに。
悪い夢であってくれ、白昼夢であってくれ。
カチカチと秒針を刻む時計の針を睨みつけても止まってくれない。
タイムリミットは2日後の零時。
準備をしなければ。行かなければ。
そう思うと身体中から血の気が引く。動けなくなる。
「ねぇ玄野。……あんたの個性で私の時間を止めてよ。」
ポツリと、縋るように言葉を吐いた私を悲しげな目で見た玄野は、
「残念ながら私の個性は人の時間は止められない。帰りやす。」
そう言いながら席を立って部屋を出る。
出ていく背中を廻と重ね合わせる自分が居て、酷く虚しくなった。
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白亜 - 悲恋とか苦手で余り見なかったけどヤンデレとか重い愛好きなので面白かったです。(死んだけど) (2023年4月17日 0時) (
レス) @page10 id: 19cc797338 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ(七海建人の嫁) - 治崎廻大好き (2022年3月20日 0時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 読んでる途中は最終的にハッピーエンドかなって思ってたんですけど、この結末になってびっくりしましたが、これはこれでありだなと思いました。私も秒針を噛む知ってますよ！いい曲ですよね！！ (2020年4月19日 11時) (レス) id: ced64b0a1f (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» 狂愛がテーマだったので片方死んだら追っかけさせなきゃ……って思いまして。ロミジュリみたいな純愛ラブストーリーではないですけどね！！読んでいただいてありがとうございました！ (2019年11月12日 12時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 最後のところちょっとだけロミオとジュリエットに似てて2人とも死んでしまった…って思いました (2019年11月11日 0時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：近藤。
| 作成日時：2019年9月14日 17時
