Story.9 ページ10
ヒーロー殺しは隠し持っていたらしいナイフで自身の拘束を解くと、傷を負っていた脳無から飛び散った血を舐めた。
その瞬間に硬直した脳無は羽ばたきをやめ地面に落ちていく。
あと少しで地面、目をつむって衝撃に備えていたその時に、私と緑谷はステインに受け止められた。
……助かった。
お礼を言おうとステインの方を見上げると、彼は私の方など見ちゃいない。ただ、憎悪に満ちた目で彼が見据えているのは
「偽物が蔓延るこの社会も、徒に“力”を振りまく犯罪者も粛清対象だ。
……全ては正しき社会の為に」
その時、現着したのはエンデヴァー。ヒーロー殺しの眉間に刻まれたシワが一層濃くなる。
「偽物……正さねば……誰かが……血に染まらねば……！
“
来い、来てみろ偽物ども！！
俺を殺していいのは
その場にいた皆が気圧された。
自己犠牲の精神。誰よりも“正しい社会”を望んでいた彼はどれだけのものを捨ててここに立っているのだろうか。
たかがヴィランの戯言と捨て置けなかった。痛いほど気持ちが分かった。
……1歩道を誤れば、私も彼と同じ場所に立っていたかもしれない。
現に私と緑谷は助けられた。
それなのに緑谷にすら恐怖の目で、ヴィランとして恐れられる彼の心中はどれだけ虚しいのだろうか。
その虚しい道をこの人はたった1人で歩いてきたのだろうか。
立ったまま、ステインは気を失っていた。
私は立ち上がって脈をとる。生きてはいる。しかし、火傷に骨折、重症だが恐らく政府の機関じゃまともな治療は受けれまい。
この人は、死んではいけない。
私は彼に個性を使った。肺に刺さった肋骨、皮膚の殆どを占める酷いやけど、蹴りで傷ついた内臓、そして私がナイフでつけた傷をすべて治す。
私が彼を治し終わった時、
「何をしているんだ、ヴィランを治してどうする！！」
そんな声がヒーローから飛ぶ。その声に、私は異常に腹が立った。
「ヴィランだって、人ですよ。」
そう言ったその瞬間、視界がグラッと歪む。
途端に痛みだした脇腹。路地裏でステインに刺された傷を治し忘れていたのだ。
足を伝って地面に赤い染みができていた。アドレナリンのせいで痛みが麻痺していた。血が出すぎだ。
地面に倒れ込んだとほぼ同時、プツリと意識が途切れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 717人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
近藤。(プロフ) - 名無しさんさん» お褒めいただき光栄です！これからも更新がんばりますのでよろしくお願いします！！ (2018年9月28日 17時) (
レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん - めっちゃ面白いですっ！！更新頑張ってくだせぇ！！ (2018年9月28日 15時) (レス) id: b36dff7859 (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ひさめさん» ほんと、ありがとうございます！治崎が出た瞬間久々に本気で叫んだので同じアパートの人達には相当迷惑かけたなー、と反省してます笑 リクエスト小話ですか！良いですね、やりましょう！！そうと決まれば準備してきます！！楽しみにしておいてください！ (2018年9月16日 22時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
ひさめ - ご無理のない範囲での更新を楽しみにしています(^^) (2018年9月16日 21時) (レス) id: 3ec8a39d6f (このIDを非表示/違反報告)
ひさめ - おめでとうございます！よかったですねオバホ！(笑)企画ありがとうございます〜！！すごく私得というだけなのですが、番外編ということで小話リクエストなど…！は、どうでしょうか！流れで本編裏話などが聞けたらとっても棚ぼたなのですが…… (2018年9月16日 21時) (レス) id: 3ec8a39d6f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：近藤。
| 作成日時：2018年7月26日 0時
