▼ さんじゅうさん ページ34
「椋、今いる?」
「はいっ、いますよ!」
「良かった。これ、返しに来たよ」
はい、と渡された紙袋を受け取り、中をそっと見る。そこには袋に包まれた何かが入っていた。
大きさや形を見るに、きっとボクがこの前貸した少女漫画だろう。
ちゃんと、読んでくれたんだ。
作曲だったり家事だったりで忙しくてそんな暇なんて無いだろうに。
きっとこうしてボクの元にわざわざ来てくれる時間すら惜しいと思うのに。
そう思うとこうしてボクのために時間を割いて下さったことにどうしようもなく喜びを感じた。
「わざわざ袋に包まなくても大丈夫だったのに…」
「そう?でもね、俺本と一緒に渡したいものがあったから」
それも兼ねてなんだ、と笑う彼の笑顔は美しいことこの上ない。
もっとちゃんと中を見てみて、と言われ、その通りに中を覗いてみる。
よく見ると、漫画と一緒に何かの紙が入っていた。
なんだろう、何かのチケット?もしくは何かの請求書??
もしかしなくても、ボクにこうして優しくしてたのはボクを陥れるための罠で、本当は絆されたボクを借金の連帯保証人にして自分だけ逃げちゃったり…!?
なんてことが頭をよぎったが、彼に限ってそんなことがあるはずがないので、その考えは頭から瞬時に消え去った。
だって、こんなにキラキラしてる王子様なんだもん。
そんなことあるはずがないよね。
ちらりと上目遣いで彼を見上げると、にこにこと笑ったままこちらを楽しそうに見ている。
それは、『中身を見てどんな反応をするのかが楽しみでたまらない』と言うような顔。
Aさんははボクが中身を確認することを待っていることに気付いたボクは、慌てて中に入っている紙を手に取り見つめたあと、ビックリして大きな声を上げた。
「う、嘘だ…!Aさん、これって…!!」
「うん。椋、その漫画が気になってる〜、欲しい〜って言ってたでしょ?
あの後俺もその漫画気になって調べたらもう完結してたから、思い切って大人買いしちゃった
それ本屋さんに見せたら、後は受け取るだけになってるんだよ
椋にそれあげるよ」
びっくりした?と笑うAさんにボクは唖然とする。
お、大人買いだなんて…これを全部ボクに?
ボクが欲しがっていた漫画は結構長連載で、それを全部買ったとなると値段がとんでもなかったはず。
値段を考え出したらさぁっと血の気が引いていき、ボクはぶんぶんと頭を振った。
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める(プロフ) - ま、ます、真澄くんのとこで昇天しました…最高…( (2020年9月26日 2時) (レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
千里(プロフ) - えええ久しぶりの更新めちゃくちゃ嬉しいです待ってました、、、これからもずっと待ってるので、更新楽しみにしています(;_;) (2020年6月21日 15時) (レス) id: 290ff80d8c (このIDを非表示/違反報告)
犬田(プロフ) - 幸くんが最高に可愛いです…夢主くんもめちゃめちゃかっこよくて好きです!!更新応援してますね! (2019年12月31日 2時) (レス) id: 4889f7f66e (このIDを非表示/違反報告)
吹雪(プロフ) - 続きすごく気になります!更新無理しない程度にガンバってください!!!!!!応援してます (2019年12月14日 19時) (レス) id: e54dafa9c8 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - すごくいい!すごく面白いです!!BLはちょっと無理なんですが、そういう感じじゃなくて、なんか、、こう見ていて普通に逆ハー!って感じで好きです!!これからも頑張ってください!応援してますー! (2019年10月30日 21時) (レス) id: 0a78293a93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あいす | 作成日時:2019年10月10日 15時