▼ じゅう ページ11
「へえ、椋くんは少女漫画が好きなんだ」
「はいっ、そうなんです…！
キラキラな王子様達がかっこよくって、ボクもいつかはこんなふうになりたいなぁって…」
「王子様かぁ…椋くんならなれそうだね」
「ほ、本当ですか…！！」
「うん。だって椋くん優しいし、話しかけたくなっちゃうんだよね」
稽古終了後。
ふと気がつけば椋がAさんの元で楽しそうに話していた。
近寄って来た椋には嫌な顔ひとつせず、自分がしていた作業をやめてしっかり目を見て話をしている辺り、相当良い奴なんだろう。
なんとなく俺も気になって彼に近付き、彼が自身の脇に置いたノートをちらりと見た時、俺は唖然とした。
ぎっしりと俺らの稽古の感想が書かれていた。
作曲者の視点から見た俺らの稽古の感想は、監督がとる感想とは当然だが違っていて新鮮なものだった。
俺らの劇を見て、そこから感じられる作品の雰囲気や一人一人の役の個性を彼なりに感じ取り、そこからイマジネーションを引き起こして曲のイメージがざっくりとメモされている。
じっとそれを見ていると、それに気付いたらしいAさんがあ、と声を零した。
「…もしかして見ちゃった？恥ずかしいな」
「い、いや…勝手に見た俺もわるかった」
細められた青い瞳に見つめられるとどうもいつもの調子が出ない。
なんだか普段の自分とは違う自分がいるようで変な感じがした。
「俺、初めて天馬くんの演技見たけど…やっぱすごいんだね。
すごいけどその分努力とか、上手いなりの悩みがあったんだろうなぁって思いながら見てた」
いいこいいこ。天馬くんは偉いね。
そう言って花が咲き誇るような笑みを浮かべてオレの頭を撫でるAさんに、かあっと顔が赤くなるのを感じる。
恥ずかしいけど、褒められたことは嬉しくて。
撫でられる感覚もなんだかむず痒くて、オレは俯いた。
どきどきどき、と心臓が高鳴るのを感じる。
＿＿＿なんだか自分が自分じゃないみたいだ。
「あ、俺そろそろ朝ごはん作りに行かなきゃ
皆稽古見せてくれてありがと、参考になったよ
そうそう、椋くんはまた今度お茶でも飲みながらゆっくり話そ」
それじゃ、と笑って去っていったあいつは一体何者なのか。
鳴り止まない心臓に気付かないふりをして、オレは口元に手を当てて横を向いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1291人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
める(プロフ) - ま、ます、真澄くんのとこで昇天しました…最高…（ (2020年9月26日 2時) (
レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
千里(プロフ) - えええ久しぶりの更新めちゃくちゃ嬉しいです待ってました、、、これからもずっと待ってるので、更新楽しみにしています(;_;) (2020年6月21日 15時) (レス) id: 290ff80d8c (このIDを非表示/違反報告)
犬田(プロフ) - 幸くんが最高に可愛いです…夢主くんもめちゃめちゃかっこよくて好きです！！更新応援してますね！ (2019年12月31日 2時) (レス) id: 4889f7f66e (このIDを非表示/違反報告)
吹雪(プロフ) - 続きすごく気になります！更新無理しない程度にガンバってください！！！！！！応援してます (2019年12月14日 19時) (レス) id: e54dafa9c8 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - すごくいい！すごく面白いです！！BLはちょっと無理なんですが、そういう感じじゃなくて、なんか、、こう見ていて普通に逆ハー！って感じで好きです！！これからも頑張ってください！応援してますー！ (2019年10月30日 21時) (レス) id: 0a78293a93 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あいす
| 作成日時：2019年10月10日 15時
