合宿所 胡蝶

○合宿 一日目 ページ8

さあて

高校生の皆さまを無事に練習に送り出し、


今の時間は午前十時。


『(昼食をつくり始めることを十一時だと仮定すると…まだ一時間は余裕がありますね…)』


この貴重な休み時間…何をしようか。



『……せっかくですし、久しぶりにバレーを見に行きますか』






宿舎から体育館まで徒歩で十分ほど。


朝にネットを張りに通った道を再び通ると、


道の端っこに生えている草花には

もう朝露なんてついていなくて


この三十度の猛暑に黙って耐えていた。


どこか私に似ている草花をぼーっと眺めながら



着いた体育館には


懐かしい音が溢れかえっていた。



シューズが奏でる、キュッキュッという音も

ボールを受け止めるレシーブの音も

心地のいい、放るようなオーバートスの音も



全部 全部、懐かしい。






とりあえず私は練習の邪魔はしたくなかったので

二階席の端っこの方で練習を眺めることにしました。


『(目立たないようにどうやって二階席まで行きましょうか……)』


そう悩んでいると



日向「あ！！胡蝶さんだ！！！」

と、オレンジの髪の元気な子に声をかけられてしまいました


あまり目立ちたくなかったのですが、しょうがなく


『こんにちは。練習は捗っていますか？』

と微笑むと。


日向「ヒィッ…！はい！いいえ！！！」

と、その子は顔を真っ赤にして答えました


『クスッ…、どっちですか？』

日向「ジュンチョーです！！」

あらあら、この子は女性に慣れていないんですね〜


『お名前を伺っても？』

日向「日向！日向翔陽、です！！！」




そうやって日向くんと話していると


影山「おい！日向ボケェ！！何練習ホッポってんだ
よ！」

日向「ゲェ、影山！！」

今度は、黒髪の失礼ですが目つきの悪い子が日向くんに話しかけてきました。


日向くんの影に隠れて、私は見えていないみたいです


『こんにちは。日向くんのお友達ですか？』

私が声を出して初めて、私がいることを知ったようです


影山「あ…チッス！……コイツとは友達じゃねぇッス」

日向「うおい！影山？！」


『そうなのですか？
…それよりもすみません、練習の邪魔をしてしまって…』


影山「！いや、！あの、……おい！日向ボケェ！！！」


日向「えぇ！なんで俺なの？！

あの、！ 全然邪魔とかじゃないんで！！」

ワタワタと頑張って弁解をしている日向くんたちが


微笑ましくて


少し笑ってしまいました

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