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息が止まった。いずれはこうなると分かっていた筈なのに、覚悟だって固めていた筈なのに、見開いた瞼を閉じることが出来ない。明らかに、僕は動揺していた。きっと、Aが倒れたとき以上に。
あげられた画像には、白い帽子の下で楽しそうに微笑む、右目に傷がある女の子が写っていた。間違いない、これはAだ。
そして彼女が見上げている先には、Aと手を繋いだ男の後ろ姿。幸いにも顔は写っていない。それでも分かった。これは……確実に、僕だ。
「……どうするか」
今のネットを侮ってはいけない。顔は確かに出ていないが、ネット世界に存在する何百、何千万人の中には、これだけの画像で誰であるかを特定出来てしまう人間だって居る。もういつ僕の名前が彼女と名前と一緒に上がったって可笑しくない。
余裕はぶっこいていられない。僕だと判明してからでは遅いのだ。今のうちに、まだ【神崎A】が誰かと一緒に居るという情報が出回っているだけの、今のうちに、なにか対策を練らなければ。
このマンションだって、僕の名前が出てしまえば特定なんて容易い筈だ。そうなればもう逃げ場はない。早いうちに、ここからも離れておかないと。
「―――かみさま、こわいかおしてるよ？」
「っ、A……ごめん、なんでもないよ。大丈夫」
思考の渦に飲み込まれそうになったところで、スマホと顔の間に幼い顔がぬっと入り込んでくる。
突然の出来事に咄嗟にスマホを背後に隠して笑みを取り繕えば、彼女は不服そうに真ん丸な左目を細めて、僕をジト目で見つめてきた。
Aは時々、僕でも想像できないほど物事に敏くなることがある。いつもならまるでなにも知らないように「ん？」と首を傾げて新しい話題を持ってくるのに、重要な物事を隠したときに限って、彼女は鈍感で居てくれない。
一言もそんな素振りは一切見せていない筈なのに、スルーして良いものと聞き出さなければならないものをなんとなく察しているのだ、彼女は。
「……かみさま、うそついてる」
「嘘じゃないよ」
「うそだもん！」
「嘘じゃないって。ほんとに何でもないから」
「うそつくかみさま、Aきらい！」
前までの彼女なら、恐らくここで「Aかみさまきらい！」としか言わなかったのだろうと思う。なのに今はちゃんと嫌いな理由まで言えるようになっている。
こんなところで成長を感じてしまう僕は能天気すぎるだろうか。
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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