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他が愚痴を吐いたりお悩み相談してきたりする中、彼はいつもネットやテレビで仕入れた事件の概要を僕に伝えに来てくれる。
彼の情報によると、現在ネットでは【ストックホルム症候群】や【リマ症候群】等の小難しい単語が様々な憶測と共に飛び交っているらしく、どうやら伊沢の作戦はかなり順調に進んでいるようだ。
別に僕らの関係は、そんな複雑なものじゃないのに。
「随分と様になってますね、河村さん」
「そりゃどうも。そっちは相変わらず忙しそうだね、社長」
「まぁ確かに、忙しくないって言ったら嘘になります」
五ヶ月が経った、第二土曜日。土日祝日は刑務所職員が極端に減るため余程のことがない限りは許可されないのだが、忙しい彼のことだ。この日しか休みが取れず、なんとか許可してもらったのだろう。
僕が刑務所内で随分と大人しいから刑務所職員も安全と判断してくれたのだろうか。
こんなところで「日頃からの善行の積み重ねって大事」なんて教訓は欲しくなかったが、まぁ、安全と思ってくれているなら悪い気はしない。
彼と顔を会わせたのは、東京に戻ってきて彼の家に泊まらせて貰って以来だった。仕事帰りと一目で分かるきっちりとした服装に視線を滑らせて、伊沢の真っ直ぐな瞳に視線を移す。
「伊沢的にはどう思ってる？」
「作戦のことですか？」
「そう。須貝さんの話を聞いた感じでは、成功したように思うけど」
「……今から見せる写真で、多分どうなったか分かると思います」
僕の質問には答えずそう言った彼は、ポケットからスマホを取り出して黙々と操作をし始める。その様子を眺めながら、僕は頬杖をついて次の言葉が紡がれるのを無言で待つことにした。
『俺に一つ、作戦が、あるんです』
彼があの日提示した作戦―――なるべく多くの人間の前で、自ら捕まりに行く、というもの。
最初伊沢にそんな作戦を提案されたときは、目的も展開も全く読めなかった。そんなことをして何になる、と心の何処かでは思っていた気がする。
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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