■かみさまはわるいひと ページ36
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―――あぁなるほど、伊沢はこれを狙っていたのか。
警察に背中を押されて歩いていく中で、僕は漸く彼の真意を理解した。
次の日、僕はAと手を繋いで東京のど真ん中に来ていた。人が行き交う歩道に突っ立って、どんよりとした空を見上げる。
曇天。前はこの空を見て、まるで僕の中に浮かんでいる靄のようだなんて考えていた。
けれど今は、あそこから光が差し込んだらどれだけ綺麗だろう、と、そんなことばかり考えている。明らかに僕は変わっていた。周りの状況と同じように、数ヵ月の旅の中で僕の考え方も一変していた。
「……もう、戻れないな」
―――これから僕は、伊沢と昨日交わした約束通り、Aを連れて警察署に出向く。彼女にはその事は伝えていない。ただお出掛けしようとだけ告げて、着いてきてもらっていた。
もし本当の目的を知ったら、Aは可愛らしく頬を膨らませて僕を怒るだろうか。嘘つく神様嫌い、とそっぽを向いてしまうだろうか。
どの表情の君も愛おしいと言ったら、君は照れたようにはにかんでくれるだろうか。
「A、フード取って良いよ」
「とっていーの？！」
「うん。今日だけ特別」
「やったー！」
今日だけ特別。そんな綺麗な言葉で包んでいるが、本来の意味は【今日でどうせ最後なのだから】なんて希望もなにもないものだ。
……いや、希望がないは少し嘘かもしれない。その【無い】希望を抱くために、僕は彼の作戦に乗ったのだから。
けれど素直で真っ直ぐなAは、僕の言葉をそのまま受け取って喜んでくれる。
今日だけ特別。その後もこの日々が続いていくと信じて疑わないからこそ、こんなにも晴れ晴れとした笑顔でフードを脱げる。僕に、笑いかけてくれる。
Aに倣うように、僕も清川さんに貰った黒いダウンジャケットのフードを取った。その瞬間、狭かった視界が一気に広がる。全く見えなかった未来への道のりに、途端に光が差し込んだ。
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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