■かみさまとかくご ページ31
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―――お久しぶりです、河村さん。そう言って彼が僕の前に現れたのは、北海道に逃げてきて二ヶ月が経とうとしていた時だった。
住居も無事に確保し、僕らを暖かく迎え入れてくれた大家さん紹介のバイトも上手く行っていた頃、初めてこの家に来訪があった。
ドアフォンなんて最新技術は備え付けられていない為、僕はサンダルをひっかけ、ドアスコープから外を覗き込む。
そして、思わず呼吸をすることを忘れてしまった。何故ならそこに、居る筈のない彼が立っていたから。あの日、確かに手紙で別れを告げた彼が、気まずそうな表情でドアの前に立っていたから。
「……―――伊沢」
「マジで情報無くて、ここ見つけるの、めちゃくちゃ時間かかりました」
流石河村さんすね。そう微笑む彼は、最後に見たときよりも明らかに窶れているように見えた。
スマホを解約してからネットとはすっかり疎遠だったが、家に設置した固定電話で清川さんから聞いた話によると、やはりQuizKnockの方へも飛び火していたらしい。
その事態は予想していたのでしっかりと退職届を提出してきたのだが、どうやら、伊沢は僕の事をまだ【社員】として扱ってくれているという話だった。
だからこそ、テレビ局や警察の対応に追われて彼はこんなにも窶れているのだろう。しかも彼の口ぶりだと、その多忙な日々の中で僕の捜索までしていたらしい。
どうしてこいつは、そこまで。
「河村さん」
「……なに」
「少し、話しませんか。Aちゃんも一緒で構いませんから」
「…………上がって。お茶くらいは出せるから」
なんにせよ、この寒空の下に彼を放置し続けるのは気が引けた。ドアを押さえて中に入るよう促せば、伊沢は礼儀正しく「お邪魔します」と一礼し、敷居を跨ぐ。
Aは今、丁度昼寝中だ。押し入れに敷いた布団で眠っているAを確認して、部屋の中央に置いたちゃぶ台にペットボトルのお茶とコップを並べる。
そのちゃぶ台を挟むようにして、僕らは腰を下ろした。
沈黙の幕が降りた五畳半の一室で、最近灯油を追加したストーブがカコッと僅かに音を立てる。
「あの」と、彼が口を開いた。腰を下ろして、数分が経過した頃だった。
「退職願のこと、なんですけど……」
「あぁ、うん」
「……すみません。破り捨てました」
「その返答はなかなかに変化球だな」
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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