▽ ページ30
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「それ、着てけよ」
「え？いや、でも」
「俺の方がでけーんだし、サイズは問題ねーよ。眼鏡の度も、確認したら殆ど一緒だった。若干弱いかもしんねーけど、割れてるやつよりはマシだろうから、素直に受け取って持ってけ」
「……なぜ貴方に恋人が居ないのか不思議でならない」
「うっせーはっ倒すぞ」
僕らの会話を間で聞いていたAの頭を最後に撫でて、清川さんは言う。「幸せにしろよ。A泣かせたらマジで許さねーから」
彼がくれたダウンジャケットに腕を通し、眼鏡をかけ変えて、僕も言う。「これでも神なんで。心配は無用ですよ」
「あ、そうだ！きーにぃ！」
「お、なんだー？」
数歩マンションから離れたところで、繋いでいた手をほどき、Aだけが清川さんの元に戻っていく。Aは雪の上にリュックサックを降ろすと、そこからあるものを取り出して、彼に手渡した。
―――あの日、クレーンゲームで取った、大きな柴犬のぬいぐるみだった。
これだけは絶対に一緒が良い、と唯一Aが抱き締めて離さなかった、ぬいぐるみ。それなのに清川さんに手渡すAに名残惜しそうな表情は見えなくて、僕はただその光景を静かに見つめていた。
清川さんがしっかりとぬいぐるみを受け取ったのを確認してから、Aは僕の元に戻ってきて、もう一度手を握ってくる。
「きーにぃ！またいっしょに、あいすたべよーねー！」
手を振り続けるAの横顔を眺めながら、今度こそ歩みを進める。背後を振り返ると、彼はAが渡したぬいぐるみを片腕で抱き締めて、その長い腕を大きく振っていた。
「今度はパピコ用意しとくぞー！」という声を聞きながら、彼の姿が見えなくなるまで、僕らは定期的に振り返り続けた。
―――また今度。次会うときは、出来れば、普通の一般人として。
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「―――キヨー、さっさと最俺ハウス行くぞー」
「あぁ、こーすけじゃん」
「って、お前なんまら薄着じゃん。流石のお前でも風邪ひくぞ。どした？」
「遠回しに馬鹿呼ばわりすんじゃねぇ。別に意味はねぇよ。ただ」
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幸せの形って、人それぞれだよなって。
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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