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「……そう、ですね……ご迷惑をお掛けして、すみませんでした。助けて頂いて、ありがとうございます」
「……別に。俺はAを泣かせてんのがムカつくと思って、あんたを説教するために連れてきただけだし」
「それでも、ありがとうございます」
追い込まれている状況は変わらないのに、不思議と心が前よりも軽くなったように感じる。
あぁ、ここまで逃げてきてよかった―――と、漸く頑張りが報われたような気がしてくる。
誰かに認めてもらうことは、こんなにも嬉しいことだったのか。当たり前だったことに、今まで全然気づけなかった。今になってやっと、気づけた。
僕はあの会社で、ちゃんと、沢山の人間に認めてもらっていたのだ。認めてくれていたから、誰も僕を見捨てたりしなかった。認めてくれていたから、僕を応援してくれる人が居た。
そんなことに、こんな状況になって漸く気づいた。
馬鹿だ、本当に。失ってから気づくなんて尊い言葉を使うことすら烏滸がましいほどに、僕は、馬鹿だ。
「……気づかせてくれて、ありがとう、ございます」
悩んでばかり居る僕の背中を叩いてくれて、ありがとうございます。
―――それから、数日間。僕とAは自分を【清川】と紹介した彼の家に泊まらせていただき、無事に僕の体調は元通りとなった。
体調が回復して、荷物もしっかり纏めたその日。「そろそろ行きます」と言うと、お世話になった彼は「お前の飯美味いから出したくないんだけど」なんて有り難い言葉まで送ってくれて。
北のヤンキーなんて言われているらしいが、とてもそうは見えなかった。
「本当に、お世話になりました」
「もう良いって。俺感謝されるの慣れてねぇんだよ。さっさと行け」
マンション下までわざわざ見送りに来てくれた清川さんにAと頭を下げて、相変わらず仏頂面の彼に言われるがまま、マンションに背を向ける。―――そこでふと、彼がなにかを思い出したように僕らを引き留めた。
振り返ると、清川さんは自分が着ていた黒いダウンジャケットを脱ぎ始めて、かけていた黒渕眼鏡を押し付けるようにして僕に手渡してくる。
思わず受け取ってしまってから、戸惑う。一体これをどうしろと言うのだろう。
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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