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僕とAの二枚分のチケットは、僕が前まで働いていたQuizKnockでCEOを務めている【伊沢拓司】の名義で購入されていた。
なんとなく、あの家に一番に来るのは伊沢な気がしていた。だから僕は彼が一番に見つけてくれるようにと、慣れない手紙を残した。深夜に震える手で書いた、退職願も添えて。
〈詫びる意味も込めて、僕はこの手紙を残すことにしました。〉
手紙の序盤に綴ったその一文には、このチケットの件も含めてのことだった。あの彼のことだ。その内自分の購入履歴を確認して、身に覚えのないチケットの購入を知り、すぐにその犯人が僕であると気づくことだろう。
「わあああっ！おそと！おそとはやい！」
「速いねぇ。けど、あんまり大声出しちゃ駄目だよ」
「はぁい」
座席の上で飛び跳ねるAをそっと注意して、僕も視線を窓の外に移す。
……その事に気づいたとき、彼は僕の事をどう思うだろうか。呆れて言葉も出なくなってしまうだろうか。あまりの最低さに幻滅するだろうか。こんな奴と一瞬でも友人であり仲間であったことを、恥じるだろうか。
どう思われたって良い。それを覚悟に僕はこんな最低な事を仕出かしたのだ。
そう、あのマンションで割りきってきた筈なのに、喉に小骨が刺さったような感覚がどうやっても消えない。
手紙にも綴ることが出来なかった思いが、飛び出したくて飛び出したくて仕方ないというように心中で暴れまわっている。
「……クイズ、」
最後に一回だけ、一回だけで良いから、お前とクイズがしたかった。そんな文字にも言葉にも出来なかった思いが、ずっと喉元につっかえて気持ち悪い。
全部自分で決めたことだと言うのに、ほんと、情けない。
―――新幹線で揺られること数時間。東京よりも遥かに気温が低いその地に降り立ち、また風邪をひかないよう、僕は持っていた上着をAに着せた。
あれからまた新しく買った、フード付きの白色のダウンジャケット。やはりよく似合っている。
自分の体には家のクローゼットに封印されていた紺色のコートを与えた。ダウンと比べると流石に保温性は劣るが、無いよりは何倍もマシだと言い聞かせて、体の芯まで冷やさんばかりの風に耐える。
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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