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「っ……くっそ」
こうなったら、直接彼に会うしかない。会って、事情を聞いて、俺だけはちゃんと貴方の味方で居たい。たとえ世間にとっては絶対的な悪だとしても、俺も一緒に、貴方が背負っているものを背負いたい。
思い立ってからはすぐに行動に移した。
玄関に乱雑に置かれていた靴を引っかけて、最近は本格的に寒さを増してきた外に半袖のまま飛び出す。CEOだとかYouTuberだとか、そういう肩書きを全部頭の外へ放り出して、ただ足だけを前につきだす。
冷たい空気に肺が痛くなっても、息が絶え絶えになっても、足は止めなかった。止めたら、駄目だと思った。
「はぁ、っ、く……はぁ……っ」
やっとの思いで彼の部屋の前までたどり着き、顎まで伝う汗を強引に肩で拭う。
汗の滲んだ手でドアの取っ手に手をかけると、厳重な筈の玄関扉は簡単に開いた。
開いていたのだ。彼の部屋の鍵が。あんなにも用心深い彼が、鍵を閉め忘れるなんてあり得ない。焦る気持ちに背中を押され、押し入るように玄関を潜った。
玄関には、なにも無かった。言葉通りなにも。靴も、傘も、花瓶も、写真も、なにも。靴を急いで脱ぎ捨てて、廊下を進む。途中にあったトイレや物置を覗いてみるも、どこも玄関同様、なにも無かった。
「かわ、むらさん……？」
人の気配を全く感じないマンションの一室で、つい彼の名前を呼んでしまう。呟いた声は空気と同化していって、勿論、なにも返ってこなかった。
廊下を進んだ先にある、最後の、リビング。妙に冷たく感じるレバーハンドルを強く握りしめ、小さく息を吸い込む。
見るのが、どうしようもなく怖かった。とっくにその可能性は脳内でちらついていたのに、それを目の当たりにするのが一番怖くて、喉が酷く乾く。
ゆっくりと力を込めたそれは、錆び固まった金属を無理矢理動かすように、酷く重たかった。
―――リビングは、閑散としていた。カーテンの無い窓からは眩しいくらいの日光が差し込み、ベージュのフローリングを明るく照らす。
テーブルも、テレビも、カーペットも、生活に必要なそれらは跡形もなく消え去っていた。
まるで最初から、ここには誰も居なかったかのように。
「……手紙？」
ただ一つ、部屋の中心にポツンと置かれたそれを除いて。
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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