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分からない。昔も今もずっと、僕は後悔しかない人生ばかりを歩んでいる気がする。
同じ道を歩んできた筈の彼は後ろを振り返っても笑っているのに、僕だけは、辿ってきた道を見ては顔をしかめている。タラレバばかりが頭に浮かぶ。
だけどもう、どんなに後悔したって、歩んできた道は引き返せない。辿ってきた道に忘れ物があったとしても、先に進むしかない。
その先に希望が無いと分かっていても、僕は……あの日の言葉を、全力で守っていくしかない。
「……A」
つっかえていた喉から、強引に彼女の名前を引っ張り出す。
あの日もこれからも、僕はただの一度だって、自分がしてきた選択に自信を持てないと思う。何度も後悔して躓いて吐きそうになって、情けなく泣いてしまうと思う。
それでも、これから待っている未来が後悔だらけのものだとしても、これだけは絶対に後悔したくない。―――Aと出会ったことだけは、どんなことがあっても、後悔したくないんだ。
「―――僕と、逃げよう」
「……にげる？」
「そう、逃げる。誰の目も届かないところまで逃げて、それで……二人で、幸せになろう」
今まで固めてきた決意は、いつ捕まっても良いという諦めに近いものだった。いつ捕まっても良い、どんな罪を背負わされても良い、誹謗中傷の嵐になっても良い。
ずっと、見えない先のことばかり考えていた。
でもこの日、僕は初めて違う決意を固めた。最後の最後まで、Aを連れて抗って見せる。たとえ明るい未来が待っていないとしても、僕が居なくなった後のAが幸せになれるように。
彼女の声が、親なんかの声に掻き消されなくなるまで。Aの声が、助けが、僕ではない他の誰かの元へ届くようになるまで。
僕は、抗ってやる。
「……かみさま」
「うん。なぁに」
「……あのね、Aもね、かみさまと、しあわせになりたい。ぱぱとままじゃ、いやなの。Aは、かみさまとじゃなきゃ、やなの」
「……」
「かみさま、にげよう」
Aの言葉に、喉の奥がじわりじわりと熱くなる。あの時と、同じだ。あの公園で味わった感覚と、まるっきり同じ。
幸せになろうとか言っておいて、本当は幸せなんて、この先には無いのかもしれない。それでも、君のその言葉を受け取ったからには、もう振り返ったりはしない。
―――ねぇ、A。いつかちゃんと、二人で……幸せになろうな。
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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