才能 ｰ special ｰ

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『あのすんません、俺Aの彼氏ですけど』



スピーカーにしろというのも予想外だったがここで直接話しにいくというのは誰が予想できるだろう。
こんなシーンはドラマか映画か、人によって作られた世界でしか見たことがない。
そういうことを軽く越えてくる男なのは分かっているけど。



｢へ？彼氏さん？一緒にいるんですか？｣


『はい。YouTuberのヒカルっていうんですけど知らないですか』


｢あーすいません俺YouTube見なくて…｣


『あそうっすか。なら知らないのもしょうがないと思いますけど俺ら付き合ってるんですよ。
なんで高校の友達とは言え目の前で他の男に彼女が誘われてんのはいい気しないっすね、俺独占欲強いんで』



無表情。
淡々と話す口調の割に内容はなかなかの少女漫画具合。



おまけにカメラで捉えられていないかもしれないが腰に回された腕。
…表情ついてこないんか君は。かつての名人か？



｢あー、なんか、申し訳ないです。じゃ、切りますお幸せに…｣


『あざっす』



思えば彼の『YouTuberのヒカルなんですけど』
という発言はあまり聞いたことがない気がする。
ヒカルの話す相手は基本仕事相手かファンの人。
もう自分を知っている人に対して話すから、わざわざそんなことを言う必要もなかったのだ。



プライベートでは店に行く時も、どこか遊べる場所へ行く時もその知名度は使わない。
自分を知らなかったとしてもプライベートなのだからそれでいい。
なのに今、彼は。



YouTuberのヒカルだということを全面に出して、あたしに構うなと威嚇した。

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