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藤の花の家紋の家に到着したAと少年は、この地域の家紋の家の家主に事情を説明した。
「畏まりました。ではお風呂の準備をしてまいりますので、お部屋の方でお待ちください」
『助かる』
通された部屋に入ったAは目の前に座っている少年に話しかけた。
『あの場所で聞くのは烏滸がましいと思ったから聞かなかったが……お前、なんて言う名前なんだ?』
「か……獪岳」
『獪岳っていうんだな……俺の名前は天雷Aだ。ここに来た時この家の家主が言っていた“鬼狩り様”というのは、俺が所属している政府非公認組織の鬼殺隊の名称なんだ』
獪岳と名乗ったその少年は、少し目を見開いだが直ぐに元の顔に戻った。
『詳しいことは後で説明することにするぞ……そろそろ風呂の用意も出来たのかな?』
「———失礼します。お風呂の用意が出来ましたのでお呼びに来ました」
Aは一言「分かった」と言うと、獪岳に手を差し伸べてから2人は手を繋いで風呂場へ向かった。
『———獪岳は両親が居ないのか?』
「えっ……」
『先程のを見ている限り、お前自身の両親が亡くなってしまったか、はたまた捨てられたという可能性も出てきたんだ』
「俺は親に捨てられた……親に捨てられてからはアンタが見たように泥水を啜ったりして空腹を紛らわせたりしていた」
獪岳はAのその優しげな声を聞くと段々と無意識のうちに自身の生い立ちについて話した。
『そんなことがあったんだな……実は俺の屋敷にちょうどお前くらいの兄妹が住んでいるんだ』
「俺と同じくらいの?」
『あぁ……お前が俺と帰りたいと思うなら、俺はお前を歓迎する』
そんな会話をしていると風呂に入っている時間が長かったせいか獪岳がのぼせて来ていることに気が付き、Aは獪岳を横抱きにすると部屋に連れて帰った。
既に屋敷の家主が布団を敷いてくれたらしく、Aは獪岳をその敷布団に横にすると、A自身は机に向かって手紙を書いていた。
部屋に取り付けられている障子を引くと、艶のある黒い烏にAは伝言と共に手紙をカラスの足に巻き付けた。
Aに届けられた手紙をAの鎹鴉が広々とした立派な佇まいの屋敷にやって来たその鴉の足に巻き付けていた手紙を屋敷に住む1人の少年が手に取ってみたいた。
「お兄ちゃん、それってA様からのお手紙?」
「あぁ……梅」
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作者名:シフォンヌ | 作成日時:2023年5月8日 2時