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とある田舎の町にそれほど大きくは無いが、両親共に医学の経験がある家があった。
1階が診療所になっており、2階が自宅となっている田舎には珍しい佇まいの家であった。
その家は洋風と和風が入っている作りをしており、その家に暮らす一人息子である天雷Aは、父親から医学についてよく学ぶ優秀な息子であった。
いつもと変わらない日を過ごし誕生日を迎えたその日の夜、幸せな日はもうすぐ消え去ろうとしていた。
その日は風が強く吹き、そんな家の扉を何者かが叩いた音でAは起き上がり、両親を呼んだ。
『父さん、母さん……誰か来てるみたい』
「あら、こんな夜遅くに誰が来たのかしら……」
「どれ、俺が見てこよう……お前達はここで待っているんだよ?」
Aの父親はそう言い残すと、蝋燭に火を灯して1階の正面玄関の扉を開けた。
すると少ししてから父親の悲鳴のような声が2階まで聞こえてきて、一大事だということを悟ったAの母親がAの手を握りながら1階に降りてきた。
「あなた、どうし……ヒッ!」
『父さん、母さん?』
「A、お前は出てきてはいけませんっ!早くお逃げな———」
そう言い残しながらもAの母親は、突如現れた謎の者に背中を捌かれて絶命した。
驚きのあまり声も出せずに腰を抜かしていたAに気が付いたその者は、Aに目をやると思い切り飛びかかりAを食べようとしていた。
「まだ残っていやがったのか……まぁいい、お前もコイツらと同じにしてやるよ!」
『ヒッ……!』
涙を貯めてAが心の中で優しい父と母の笑顔を思い浮かべながら目をぎゅっと瞑ると、微かにその場には見合わない声が聞こえてきた。
「———雷の呼吸、壱ノ型 霹靂一閃」
「……は?」
『えっ……』
Aの目の前には、1人の剣を持った男性と自身の目の前には頭だけになった両親を殺した者の姿があった。
腰を抜かして呆然としているAに、剣を持った男性がAに目線を合わせて「大丈夫か」と声を掛けると、Aは慌てて感謝の言葉を言った。
『た……助けて頂いてありがとうございます!』
「うむ……両親は助けることが出来ずに申し訳なかった……お主だけでも無事で良かった」
Aはその言葉を聞くと、涙ぐみながらもその男性に近づいて頭を地面に付けて咄嗟に言った。
『こんな俺でも……あなたのようになりたいんです!
両親みたいに困っている人を助けたいんです!……どうかお願いします』
———俺を貴方の元へ連れて行って貰えませんか……強く、なりたいんです
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作者名:シフォンヌ | 作成日時:2023年5月8日 2時