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『これは———』
Aがそう呟くと、廃学校のドーム状になっている建物に広がる水面のあちこちから忽ち金色の糸が空に昇っていった。
Aとダイジンを含めた6人がその先を見上げると、扉から噴き出した濁流が枝分かれをしたかのようにぐるりと空を覆っていた。
その光景はまるで扉から一本の茎が伸び、その先端で巨大な赤銅色の花が一輪咲いたかのようだった。
それを支えるかのように伸びている金色の糸は、まさにその花に逆さに降り注ぐシャワーのようだった。
そして遂にその花が倒れ始めると、Aは絶望に絞り出されたかのような声を出して近くにいたダイジンをぎゅっと抱きしめた。
その途端、Aも含めた5人の携帯から地震警報の無機質な合成音声と、激しい揺れや廃学校の軋みに事情の知らない4人は周囲を警戒し出した。
警戒することに集中しすぎた4人は、地震警報の音と今の状況だけで手一杯になってしまい、ドーム状の建物の一部が落下していることに気がついていなかった。
『危ないっ!』
「「「「っ!!」」」」
Aが近くにいた中也の背中を思い切り押すと、5人は一斉に倒れたが、Aの左腕が廃学校のドーム状の建物の一部が落ちてきたことにより、怪我をしてしまった。
「A、だいじょうぶ?」
『ダイジン……大丈夫だよ、それよりも私は直ぐ扉を閉めないといけないからこの人達を守ってあげて』
Aはそう言うと、左腕を庇いながら扉に体当たりした。
4人はその様子を見て、Aの元へダイジンの「あぶないよ」という言葉を無視してAの加勢に向かった。
『貴方たちは……何故!?』
「手前はこの扉を閉じなきゃいけないんだろ!」
中也のその一言にハッとしたAは、小さくもはっきりと祝詞を唱えた。
———かけまくもかしこき日不見の神よ
遠つ御祖の産土よ。久しく拝領つかまつったこの山河、かしこみかしこみ、つつしんで———
『お返し申すっ!!』
Aがそう叫んで鍵を回すと、巨大な泡が割れるような音を立てて、濁流から弾け散った。
そうして扉を閉めることに無事終了したAは、4人の方に目を向けて深々とお辞儀をした。
『ありがとうございます……貴方たちのおかげで
Aに言われたダイジンが肩に乗ったことを確認したAはその場を去ろうとしたが、中也がその腕を掴んだ。
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虚無虚無ぷりん - すずめの戸締りも文ストも好きなので嬉しいです!応援してます! (2023年2月2日 11時) (レス) @page6 id: d13357cef5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - うわぁ、待ってください。好きです((応援してます! (2023年1月31日 17時) (レス) id: 9d95f1ffe8 (このIDを非表示/違反報告)
nemuruneko0315(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2023年1月30日 15時) (レス) @page2 id: bad30b3ef3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シフォンヌ | 作成日時:2023年1月30日 0時