_ ページ16
_
「さて、本題に入ろうか」
優しい笑みを浮かべていた北斗の兄は、厳しい顔つきになった
「…兄さん？」
「悪いけど、北斗と別れてほしいんだよね」
「え？」
北斗にとって予想外のことだったのか、
俺にとっては想定内のことに驚いた声をあげた
「君とじゃ釣り合わないんだよ、住む世界が違いすぎる」
「ちょ、ちょっと兄さん…！」
「小さくて狭くて汚いアパートに住む君と、車でしか移動したことのないような北斗。分かるよね？」
そんなのとっくにわかってる
知ってるんだよ、そんなことは最初から言われなくても
そんな苛立ちと共に、この人の言葉がそのまま胸に入るのを感じる
「待ってよ兄さん！そんなこと言うために来たの？」
悲痛な声を上げた北斗は、さっきまで観劇で流した涙よりも多く涙を流し始めた
「…っていうのが、うちの親の判断」
「え、？」
きつい顔をしていたかと思えば、また最初のように微笑んだ
きゅ、っと北斗の手を握ったまま優しく笑う
「…全てを捨てる覚悟はあるか？」
「捨て、る？」
「田中君の為に、全てを捨てられるか？」
俺の、ために
全てを捨てる？
そんなこと出来るわけがない
虫も殺したことのないような顔して、
細くて白くて何色にでもすぐに染まりそうな顔して、
そんな北斗が俺のために全てを捨てる、だなんて
望んでないんだよそんなこと
そう、思うのに
じゃあ反対に北斗がもう俺の側にいないことを想像すると、
胸が苦しくてそのまま死んでしまいそうな気さえする
「…まだ覚悟ができてないみたいだね。それができたら話しにおいで」
とりあえず今は彼との時間を楽しみなさい、
そう言った彼は異国人と運転手を連れ帰っていった
「北斗…」
「何で、何で俺たちは違う世界なんだろうっ」
「…樹と2人で帰りな、」
もしかして北斗は気付いてなかったのだろうか
俺が見上げても届かない世界で生きていたことに、
本来ならば俺となんて出会うこともないって
家に着くまで並んで歩きながら、俺らは一言も発しなかった
こんな重い空気は出会ってから初めてだった
「…着いてこいも捨ててくれも、言わねえよ」
「分かってる」
「北斗が好きなようにしろよ」
「…そんなの……」
また涙を流し始めた北斗の頬に触れた
温かくて柔らかくて、
このまま俺の色に染まってしまえばいい
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 621人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふわ(プロフ) - 当然ぷりむら様のお話が好きな方もたくさん居られますしぷりむら様の大切なお話なのでご連絡させていただきました。複数回に分けてのコメント失礼しました (2021年6月14日 22時) (
レス) id: d3d6811ffb (このIDを非表示/違反報告)
ふわ(プロフ) - ぜひアイドル緑くんとファン黒くんのお話を書きたいのですが書いてもよろしいでしょうか？ (2021年6月14日 22時) (レス) id: d3d6811ffb (このIDを非表示/違反報告)
ふわ(プロフ) - 私はそのお話を読んだことはありませんがすごく素敵な設定で私自身緑黒をメインに活動しているのもあって (2021年6月14日 22時) (レス) id: d3d6811ffb (このIDを非表示/違反報告)
ふわ(プロフ) - 非常に気になりましてフォロワー様からぷりむら様のことを教えて頂きました。 (2021年6月14日 22時) (レス) id: d3d6811ffb (このIDを非表示/違反報告)
ふわ(プロフ) - 初めまして。こんばんは。占ツク作者のふわと申します。先日私のフォロワー様からアイドルの緑くんとファンの黒くんのお話を書いているかと連絡が来まして私の方はそのようなお話は書いていないのですが (2021年6月14日 22時) (レス) id: d3d6811ffb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年2月23日 22時
