混ぜたら何色？【完結】 (ページ23)

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「わ！びっくりした？」

会社から出ればエントランスで待っていた北斗

「なんで、」

「言葉ではうまく言えないけど、今日は樹に早く会ったほうがいい気がして」

その言葉に涙が出そうになる

今一番会いたかったやつがここにいる

俺がここまで生きてこれた意味そのものが、ここに

「さ、帰ろっか」

ぎゅっ、と強く俺の左手を握った北斗は家へと足を進めた

「今日母親を見かけた」

「…そっか」

一瞬驚いた顔をした後、俺の顔を見て微笑んだ

「傷疼かなかった？」

「お前はあのババアに会ったとき疼いた？」

「うーん…いつでも横に樹とジェシーが居てくれたからね。たぶん震えたけど疼いてはないと思う」

北斗の体に残る複数の打撲痕

俺の体に残る複数の切り傷

どれも虐待の証だった

「また会いたい？」

「…いや」

「そっか」

もう二度と会わない

それは既に決まっていることのような気がする

「きっとね、俺の人生は樹とジェシーに会ってスタートしたんだと思う」

繋いだ手は一度離され、指を絡める形で繋ぎ直された

「生まれた悲しさも、生きる辛さもたくさん感じてきたじゃん。でもそれ以上に俺を愛してくれる人がいるから。だから、生きてられる」

そう言って微笑んだ北斗の目には暗いところなんてなくて

あぁ、もう暗い目をしていたのは俺だけだったのか、

北斗を暗闇に引き摺り込んでいたのは俺だったのか、

「だからね俺もたくさん伝えようと思う。
樹大好きだよ、生まれてきてくれてありがとうって」

北斗に抱きしめられた瞬間、柄にも無く大粒の涙が目から溢れていって

俺らの家の前に到着していてよかったと心のどこかで安堵した