混ぜたら何色？【完結】 (ページ22)

今日:19 hit、昨日:14 hit、合計:127,574 hit

・ページ22

・

それは突然だった

病院で営業している時に偶然見た病室のネームプレート

そこに書かれた“田中佳子”の文字

一瞬で身体中に緊張が駆け巡り、息がし辛くなる

そういや北斗もこんな風によくなっていたなと思った

「田中さん、検温の時間ですよ」

病室の前で立ち尽くす俺を不審そうに見た後、

その中へと足を踏み入れていく看護師

声に反応して振り向いた老婆は、

記憶の片隅に残る、母親だった

「田中さん、今日もいい天気ですね」

虚ろな目で窓の外を見る老婆に声をかけ続ける看護師

その機会的な繰り返しでさえも、今この場にいる誰よりも生命力を感じる

「あと、何日ですか」

ぼそっと老婆が呟けば、困ったように微笑む看護師

「余命…あと2ヶ月って言われてから何日経ったの」

そこで初めて知る老婆の寿命

「お前なんていなければ、」

「お前を産んだせいでアタシの人生散々よ」

「お願いだから居なくなって」

2歳の頃に捨てられた俺に残る母親の記憶

何をしてもしていなくても殴られ、食べ物もろくに与えられなかった

公園に遊びにきた流れで園に迷い込み、そのまま保護されたのが俺だ

「そういえば息子さんいるんでしょ？」

突然看護師から発された息子という言葉

それが誰を指すのか分からないけど、これ以上この話を聞きたくなくて

走って病院を後にした