One more time “red” ページ31
・
side black
「もっかい」
「もう、甘えん坊だね」
ちゅ、と口付けを強請れば必ずしてくれること
「寒いね」
「寒くなくてもするくせに」
ぎゅ、と抱きつけば抱き締め返してくれること
「何でそんなに笑ってるの？」
「北斗が隣にいるだけで嬉しくて笑顔になるんだよ」
ふふ、と笑えば笑い返してくれること
「疲れた」
「今日もよーく頑張りました」
ぽん、と優しく頭を撫でてくれること
全部ぜーんぶ当たり前じゃなくて
いま、ここに居てくれるからこそ出来ることで
「ねぇジェシー、会いたいよ」
そんなこと空に向かって呟いてみても、もう声は返ってこない
ジェシーと歩いた海沿いも、
ジェシーと遊んだ公園も、
ジェシーと行ったカラオケも、
ジェシーと見た夕焼けも、
なーんの色も見せないただの景色に変わってしまった
「トマト嫌わずに食べて！」
「北斗の作る朝ごはんが世界一好きだよ」
「え！ケーキ作ったの！スゴ！！」
「怒ってる？…仲直りのプリン食べよ」
ジェシーとの思い出が詰まったはずの料理だって、
もう、なーんの味もしないただの栄養補給物資
「俺は北斗の笑ってる顔が一番好き。だからね、何があっても笑える場所を見つけてね」
ねぇ、ジェシー
俺の笑える場所はやっぱりジェシーの隣だけだったみたい
大好きな同僚の慎太郎と高地も、
大好きな幼馴染の樹と京本も、
みんな俺を笑わせようとしてくれてるのに全然笑えないんだ
ジェシーが隣に居た時は、あんなに楽しくて仕方なかったはずなのにね
突然居なくなるなんてずるいよ
置いてかないでよ
「もし永遠の命と引き換えに何か大切なものを渡してって言われたらどうする？」
「さっきの映画の話？」
「そう、ジェシーならどうする？」
「うーん…永遠の命なんていらないかな」
「そうなの？意外、」
「俺の大切なものは北斗だし、北斗のいない世界を一人で永遠に生きるなんて無理だよ」
ねぇ、ジェシー
ジェシーと会えなくなってもう二回冬が過ぎたよ
また桜の咲く季節になるんだ、
この二年、俺にとっては永遠みたいに長かったよ
あの時は何それ、なんて返したけど
俺も同じ気持ちだよ
ジェシーのいない世界を一人で生きてくのは無理だよ
ねぇ、ジェシー
もう一度、キスして
もう一度、抱き締めて
もう一度、笑って
もう一度、頭を撫でて
もう一度、声を聞かせて
fin
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 749人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷりむら
| 作成日時：2020年9月3日 7時
