25 ページ26
・
「一つ、聞きたいことがあります」
気が動転している山本さんはこの際放っておく。
真っ直ぐにジェシーさんを捉えて話をする。
「どうして、ここで事故が起こると？」
少し迷いを写した目。
その迷いは何？
数分間沈黙した後、ジェシーさんは微笑みながら言った。
「北斗さんと一緒かな。俺も少し未来が見えるみたい」
それは未来を見える俺自身をも肯定してくれていて。
きっと悩んだだろうに、
こんなの信じられなかっただろうに、
寒い雪の中ここで俺がくるのを待ち続けて事故を未然に防いでくれた。
俺がこれまで変えてこれなかった未来を彼は一人で変えてしまった。
そのことに感動して、
こんなことを信じた彼の真っ直ぐさに感動して、
思わずジェシーさんの胸に飛び込んだ。
こんなに雪が降っている寒い日なのに、なぜかそこだけはとても温かくて。
ジェシーさんもこの温かさを逃さないように、俺を腕の中に閉じ込めた。
「…信じてくれるんですか？」
躊躇いがちな声が頭上から聞こえる。
未来が見える？
馬鹿馬鹿しい。
超能力者か。
占い師か。
はたまた狂言師か。詐欺師か。
普通は信じてくれない。
俺は初めてこの力がある有り難みを知った。
あの後、金髪の彼が警察を呼んでくれて。
彼の証言のおかげでジェシーさんが悪者にされることもなくなり、一安心した。
俺は一応病院に行くことになったんだけど…
そこでも事件が。
「運転してたのは俺じゃなくて、あっちだよ！」
山本さんが運転手ではないと主張し始めたのだ。
どうやら会社の車らしく、自分が運転手であると都合が悪いそうだ。
目撃者がいるわけだからもちろんそんなの聞き入れられなかったけど。
でも、金輪際彼とは関わらないことを決めた。
こんな時に身を売られても困るし、やってもないことで責められるのもごめんだ。
「俺がついて行きます」
病院に送られる俺の付き添いとしてジェシーさんが手を挙げた。
軽症だからタクシーで病院に向かう。
その車中は驚くほど静かだった。
でも、握ったままの手は温かかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 570人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷりむら
| 作成日時：2020年9月2日 20時
