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黒side
大きな音と軽い衝撃。
一瞬頭を強く叩かれたような感覚。
何が起こったのか分からず自分がどんな状態なのかもわからない。
そんな俺の意識を呼び戻したのは、
彼の声だった。
心配そうに下がった眉と今にも涙に変わりそうな目元の雫。
まだ思考停止中らしい脳が綺麗だ、と感じている。
冷たい俺の指先を包む彼の手は驚くほど震えていて。
一体俺には何が起きたのだろうか。
「おい!お前!」
突然聞こえる罵声。
それは運転席にいた山本さんから発せられたもの。
車は看板にのめり込む形で止まっているのに、俺にも山本さんにも目立った外傷はなかった。
「わざとだろ!お前邪魔しに来たんだろ!」
ジェシーさんの胸ぐらを掴み今にも殴りかかりそうな山本さんを急いで止める。
「山本さんっ!どうしたんですかっ、」
「あぁ、北斗くん怪我ない?…コイツ君のこと好きみたいでさ邪魔しに来たんだよね」
邪魔…?
山本さんの言うことが少しも理解できない。
というかジェシーさんはお隣さんなだけだし。
当の本人のジェシーさんは口を閉ざしてしまったし、俺は何が何だかわからない。
「その人がいなかったら、おれ、死んでました…、」
恐る恐る挙げられた声。
振り返ると金髪の青年。
「車が真っ直ぐ俺の方向かってきてて、でも運転手さんも俺も気付いてなくて…そこの方がそれを防いでくれて、」
手を震わせながら涙を零しながら話すその姿に、
数メートルずれていたら本当に彼が死んでしまっていたのだろうことを知る。
「死ぬ?何の話だよ、コイツが邪魔したから事故が起きてんだろ!」
「誰も死なない事故になったんですよ」
頑なに口を閉ざしていたジェシーさんが口を開く。
「俺言いましたよね?雪の中車はスリップする、だから乗るなって。その忠告が守られたなら俺が貴方の前に現れることなんてありませんでしたよ」
こんなに怒っているジェシーさんを見るのは初めてで。
そして何より引っかかる、
“雪の中車はスリップする”という言葉。
どうして断言できるの…?
「全部偶然だろ!むしろお前が来たせいでこうして事故になってるんじゃないか!」
もはや聞く耳を持たない山本さんは金髪の彼の言葉も聞いてないみたい。
「あのままだと僕が」と繰り返す金髪の彼は震え続けていた。
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作者名:ぷりむら | 作成日時:2020年9月2日 20時