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黒side
ジェシーさんは変わった人だ。
俺が未来のことを話してくる変な人だと知っているのに、
「人にはそれぞれ個性とか特技とかあって…あ、俺は人と話すのが好きっていう個性があるんですけど。その、個性とかの一つじゃないですか?」
決して気味悪がることなく。
「俺はその個性は素敵だと思います。だって俺を助けてくれたでしょ?」
真っ直ぐ向けられた目に、涙が止まらなくなって。
黙ってバスを降りてしまった。
おかげで歩いて出勤だ。
何度も何度もジェシーさんの言葉が反芻される。
個性、
特技、
素敵。
それはあまりにも俺に馴染みのなかった言葉たちで、
今まで恨むばかりだった予知夢が何だか輝いたものに見えた。
「山本さん!」
「お待たせ、ごめんね寒いのに」
「いえいえ、今日はこの資料とこれ持ってきてて…」
山本さんは以前仕事でお世話になった関係で今は情報提供の協力をたまにしている。
「なんか北斗くん、綺麗になったね?」
そして、きっと。
彼は俺に好意を寄せてくれている。
何度も言うようだけど、昔から何故か俺は男性に好かれやすかった。
電車に乗れば男性に寄って来られるし(だからこーちから電車禁止令が出された)
告白されてきたのも男性からばかりだった。
山本さんも言ってしまえばそのうちの一人。
年上で大人の余裕を感じさせる山本さんに憧れていた。
「さ、乗って。予約の時間だ」
山本さんの愛車に乗る。
必ず扉を開けてくれるのもスマートで大人だ。
しばらく走ると降り始める雪。
今日は晴れの予報だったはずだけど。
そういえば雪の日の夢って以前何か見たような…
頭のもやを振り払うようにブンブンと振ると、
隣からクスッと笑う声が聞こえる。
「どうしたの?頭痛い?」
「ううん、なんか大事なこと忘れている気がして…なんだろう」
大丈夫、とでも言うように山本さんは俺の頭を撫でる。
その温かみを肌で感じた瞬間、
体が吹っ飛ぶ心地がした。
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作者名:ぷりむら | 作成日時:2020年9月2日 20時