１０４ ページ4
＜どうして…！＞
焦るAとは対照的に、忌子は大した動揺も見せずに静かに結城を睨みつけている。
＜いや、語弊があったな。貴様は、
＜……理由は？＞
＜スパイになるには、憎悪の念が大きすぎる＞
＜憎悪だと…？＞
結城は嘲るように忌子を上から下まで眺め回すが、それでも忌子は臆することなく結城を睨みつける。
＜根拠は？＞
＜これはすぐにAにも教えてやるが、人の感情のうち一番読み取りやすいのが殺意だ。それほどの強い憎悪は外に滲み出るものだからな。貴様の心は酷く不安定で、そして危うい。私が作ろうとしている諜報機関では、貴様のような奴は用無しだ＞
結城は「これで話は終わりだ」とばかりにこちらを振り向いた。
忌子が一緒でなければ、私は…
Aがそう言おうとしたその瞬間、信じられないことに突然物凄い勢いで忌子が突進してきた。
＜いぃ…っ！？＞
＜なら仕方ない、計画が少し早まっただけだ＞
Aの手足をガッチリと押さえ込み抵抗出来ないようにして笑うのは、忌子だった。
その手には訓練で使っている小型ナイフが握られていた。訓練後は必ず返すよういつも教官が厳しく言っているはずなのに…。
＜ねえジィズ！何してんの！？＞
＜何って…。俺とお前、二人でここから出るんだろ？＞
＜じゃあなんでそんなもの持って…、訳わかんないよ！！＞
＜お前を殺して俺も死ねば、俺らはこのクソみたいな場所から解放される＞
＜はあ…！？＞
自分を見下ろしてクツクツと喉を鳴らして笑う忌子は、もう自分の知っているあの忌子ではなかった。
泣きそうなときに抱き締めてくれた腕の温もりも、安心させてくれるような笑顔ももうない。
＜ここから出て自由になることは不可能だ。俺はそれに気づいてから、毎日毎日お前と二人で死ぬことばっかり考えてた＞
＜やだ…、ジィズおかしくなってるよ…＞
＜大丈夫、
涙で滲む視界に、忌子がナイフを振り下ろす瞬間が映った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽなふ(プロフ) - 千歳さん» 長いのにここまで読んでいただけて嬉しいです！！続きを希望する声もちらほら見るので、余裕ができたら少しずつ書いていこうかなと思っております！そのときはどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m (2020年4月15日 8時) (
レス) id: ae4a510d66 (このIDを非表示/違反報告)
千歳 - 完結おめでとうございます！すごくおもしろくて逆ハー感もあってすごく好きです！学パロもみたいという願望もあります… (2020年4月13日 20時) (レス) id: 0f5e08b4d3 (このIDを非表示/違反報告)
衛(プロフ) - 完結おめでとうございます！！以前リクエストさせていただいた『円』です。(ログインしたので名前が変わっています)最後の最後までジョカゲらしさの詰まった素敵な小説でした！続きも勿論気になるのですが、先ずはゆっくりして下さい…！これからも応援しています！ (2018年7月27日 18時) (レス) id: 16521b6000 (このIDを非表示/違反報告)
煉林檎(プロフ) - 本当にありがとうございます (2018年7月27日 13時) (レス) id: adcc636ae1 (このIDを非表示/違反報告)
煉林檎(プロフ) - 本当ですか！？凄く嬉しいです♪気長に待っているので、無理はしないで大丈夫ですよ！ (2018年7月27日 13時) (レス) id: adcc636ae1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽなふ | 作成日時：2018年6月29日 17時
