はじめての ページ32
「飲み会に誘われた」
「……は?」
大学構内、ざわざわと人の往来する廊下で尾形は思わず足を止めて、隣を歩いていた香坂Aをまじまじと見つめた。
今、この女はなんと言った?
「だから、ゼミの人に飲み会誘われたの」
「…いつ?」
「今日 だから今日はウチに来ても私いないからね」
そう言って歩くのを再開させるAの足取りは、どう見てもウキウキとしているように見えた。
基本サークルのメンバーとしか出かけないような付き合いの狭い者同士のカップルだ。
そんなAが今回初めて、サークル外の自分の知らない仲間と飲みに行くと言うのだ。
尾形百之助は大変粘着質な男であった。
さりげなくAから時間と場所を聞き出すと、店が人で埋まる前にカウンターを陣取ってしっぽりと一人飲みを決め込むことにした。
この男は昔から行動力がずば抜けているのである。
「あ、来た来たAちゃん!待ってたよ〜」
先ほどからテーブル席についていた団体の内の一人の女が、店の入り口に向かってそう声をかけた。
尾形は普段はオールバックにしている髪の毛を左右に流し、メガネを掛けるという徹底ぶりであった。
それでも念の為入り口から入ってきたであろう自身の恋人にバレないよう顔を背けておく。
「ご、ごめん… 来たことなくて、ちょっと迷っちゃって」
「大丈夫大丈夫!そんなことよりも珍しくAちゃんが参加してくれたことの方がみんな興味津々だから」
「はあ」
尾形はチラリと背後のテーブルに混ざる香坂Aに視線をやった。
服装は今日大学で会った時のままではあるが、心なしか髪も化粧も普段より気合いが入っている気がしないでもない。
そして男女混合の飲み会だなんて聞いてない。
人数もちょうど同数で、こんなのはまるで…
「はい!じゃあ全員揃ったことだし、
カウンターに置こうとしたジョッキがガタッと音を立てる。
思わずコントロールの効かなくなった手を押さえながら感情に任せて後ろを振り向こうとしたのを、尾形はなんとか理性を総動員させて我慢した。
危ない危ない。
後ろでおそらく音頭を取っているであろう男の喉に、この手元にある箸をブッ刺しに行ってしまうところだった。
「ちょっと、やめてよ〜 今日はそんなノリじゃないし!」
「あれ?そなの?」
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久遠(プロフ) - 宇佐美の狂ってる感じが最高でした!ありがとうございます😊 (4月7日 21時) (レス) @page43 id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐プリン(プロフ) - 鯉登の現代ver.と明治ver.両方見てみたいです!よろしくお願いします! (4月7日 10時) (レス) id: b06481f634 (このIDを非表示/違反報告)
久遠(プロフ) - リクエストなんですが、宇佐美との話欲しいです🙇🏻♀️現代でも明治でも良いです! (3月24日 22時) (レス) @page37 id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐プリン(プロフ) - めちゃくちゃいい話で感動しました〜😭ありがとうございます! (3月18日 0時) (レス) @page31 id: b06481f634 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐プリン(プロフ) - やばい!鶴見中尉との関係めっちゃ好きすぎて叫びそうです!笑 リクエストなんですがもし夢主だけ生存して鯉登オチだったらっていうと軍に入っていない少し幼い夢主と鶴見との絡みが見てみたいと思ったのですが出来ますでしょうか??お願いします! (3月13日 23時) (レス) id: b06481f634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽなふ | 作成日時:2024年2月25日 23時