氷上のプリンスと目覚めぬ歌姫 (ページ10)

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10話ページ10

さっきまで苦しそうに息をしていた彼は、まだ呼吸は落ち着かないものの、ニッコリとしながら答えた

「僕、あのお歌また聞きたかったんですよ。昨日は途中からだったので！」

赤っ恥をかくまいと、さっきまでリンクの氷をならしていたのに

まさかの本人に頼まれるとは…。

…彼の滑りをみた私が、嫌です。なんて言える訳もなく

「…わかりました。」

そう言ってスケート靴に履き替え、リンクへ上がる

「…やっぱり見られるのって恥ずかしいですね。」

「僕も最初はそうでしたけど、周りなんて気にしてたら始まりませんから。」

リンクの外で羽生選手はそう言って、どうぞ。と言うように手のひらを差し出される

…やるしかない

「…ここでは。…私が、主役。」

自分にそう言い聞かせ、深呼吸をして

静かに歌い始める

「Someday ＿＿my prince will come＿＿＿.
Someday ＿＿we'll meet again＿＿＿.」

…昔から、歌だけは自信があった

小学生の頃は、歌手になるんだ。スケートをしながら歌って、皆に拍手されるんだ

…そんな夢があった

しかしテレビを見ると、凄まじい歌唱力を持った人達ばっかりで

すぐにそんな夢、諦めてしまった

将来何をしたいかもわからず、学校に行き、憂鬱になり

…羽生選手とは大違いだ

小さい頃から努力を惜しまず、夢に向かって走り続けて

…心から、尊敬できる

「Someday when my dreams come true＿＿.」

でも、こんな私でも

"夢は叶う"

そう信じ続けている

…その"夢"が今は無いけど