氷上のプリンスと目覚めぬ歌姫 (ページ6)

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6話ページ6

「…やっぱ夢なんじゃないか。」

朝起きて、そう思いスマホを確認してみるも、連絡先には"羽生"の文字

「…夢じゃなかったかぁ…。」

あ！そうとなれば早く佐藤さんに頼んでみなくては…！

「あんたこんな朝っぱらからどこ行くの！仕事は！？」

そう台所から大声で呼びかけてくるのは母

「在宅ワークになったの覚えてないの！？もう今日の分は終わらせたよ！行ってくる！！」

だからどこに！と聞かれた気がしたが、知らぬふりをして家を飛び出した

私は急いでスケート場へ向かった

「…さっ、さとう、さん…！！」

「おー！Aちゃん最近なんで午前に…ってどうして息切れてるんだい！」

そう言ってゼェゼェしている私の背中を優しくさすってくれる

私は喘息持ちなので、少し走っただけでも息が苦しくなってしまう

佐藤さんはそれを知っているので、必死に"落ち着いて"と連呼している

「ご、ごめん…。は、はぁ、…いや、実はね…。夜にいつも私スケート場来るでしょ…？」

「あぁ、そうだな。どうした？」

「…えっと…。その…。」

ここで正直に羽生選手が練習したいと言っていると言うべきだろうか…

確かに佐藤さんは信用しているが、羽生選手のこととなれば話は別かもしれない

「…わ、私の"お友達"も1人連れてきてもいいかな…。」

我ながらなんて下手な頼み方だろう

でも、今の自分が思いつく精一杯の頼み方だった

「友達！？それを聞くためにこんなに急いできたのかい！？…よっぽど大切なひとなんだねぇ…。」

Aちゃんにそんな子が…と遠い目をしながら、違うから！！と必死に説明しようとする私をスルーし

「全然大丈夫だよ！報告ありがとうね！」

そう言って、私の頭をいつものようにガシガシと撫でる佐藤さん

…まあ何とかなった様だ

急いで羽生選手にチャットを送った