氷上のプリンスと目覚めぬ歌姫 (ページ32)

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32話（Y.side）ページ32

「んー、軽い貧血みたいだね。」

控え室にいた救護のスタッフさんが、Aの様子を見ながら俺にそう伝える

「1時間ほど横になって休んだら大丈夫だと思うよ。」

「…そうですか。ありがとうございます。」

俺はまだAの隣に居たかったが、ノブくんが控え室のドアの隙間から俺に手招きをした

…なんだ…？

そう思いながら控え室を出ると、そこには真央ちゃん、カナ、昌磨が勢揃いしていた

「ゆづ！！Aちゃんは！？」

「1時間くらい横になってたら大丈夫だって。とりあえず落ち着いて。」

取り乱すカナに、優しく答える

「…凄い。心配になるくらい、役に入り込んでたよね…。」

そう言いながら俯き、自分の腕をさすっているのは真央ちゃん

「…Aさん、だったよね。本当に一般の方なのかな…？」

人見知りの昌磨までもがAに興味を持った

「そうやなぁ…。ゆづ、あの子何もんなん？ゆづ彼氏なのになんも知らんの？」

しかめっ面でそう言うノブくんに、ゆるゆると首を振った

「…2週間前くらいに、あの子の方から告白してくれたんだけどね。…最初に見た時も歌ってたんだ。多分、それが日課だったんだと思う。」

そこに居たみんなが、うぅ〜ん。と唸っていたらノブくんが「あ、そうや。」と声を出す

「ゆづ、全日本出るんやろ？」

「はい、出るつもりですけど。」

「…その後にある、メダリスト・オン・アイスの余興みたいな感じで、Aちゃん出させられへんかな？」