氷上のプリンスと目覚めぬ歌姫 (ページ4)

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4話ページ4

「…あっ、…えっ…？」

突っ立って動けないでいる私を他所に、大きな声で羽生選手が話しかけてくる

「素晴らしかったですー！」

「あっ、ぁぅ…。」

なんで貴方がここに？いつから？そして何故見ていたのか？

聞きたいことは山ほどあったが、まだ混乱していてその上興奮が冷めず、涙を流し続けながら、立っていることしか出来なかった

そんな私を見た羽生選手は、クイッと私に軽く手招きをした

な、なんだろうと思いながら恐る恐る近づくと、渡してくれたのはポケットティッシュだった

「それで涙、拭いてください。」

そう言って微笑まれ、ありがとうございますと言いながら涙を必死に拭いた

…そうだ。聞きたかったことを聞いておこう

「…あの、なぜ…ここに？」

「あ、そうでした。今日のお昼頃に、ここで練習させて頂いてたんですけど。あそこのベンチにイヤホン忘れてしまって。」

そう言いながらリンクの外にあるベンチに向かう羽生選手

あぁ…だから昼にあんな入口でファンが…納得だ

イヤホンが無事で、安心したような顔を見せた羽生選手が、私の方を見て軽く首を傾げた

「貴方は何故ここに？外の看板は19時閉場と書いてありましたけど…。」

まぁ僕もドアの鍵が空いてたから入ってきちゃったんですけど…と言いながら頭を搔く羽生選手は、やはりすらっとしていて素敵だった

「…素敵ですね。」

「え？」

ハッとして話を無理に変える

「いや！ここの運営してる人が私の知り合いで！！開けてもらってるんです！」

「そうなんですね！…。」

そう羽生選手が返答してから、何かを考えるような素振りをした

「…どうかされましたか？」

「…ぅーん…。いや、でも…。」

1人でブツブツ言いながら、1分ほど経った時

羽生選手が、こう言った

「無理を承知でお願いします。この時間帯に、僕もここで練習をさせて頂けないですか？」