氷上のプリンスと目覚めぬ歌姫 (ページ26)

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26話ページ26

「…羽生くん、この調子だともしかして…。」

「うん、いるよ。」

微笑まれながらそう言われ、必死に辺りを見回すと彼女はいた

人混みの中、こちらの様子を伺うように、奥からちらちらと覗いている

「…っ、真央ちゃん！！」

「わぁ…！こんにちは、Aちゃん。」

私が真央ちゃんの近くへ行くと、憧れの真央ちゃんに名前を呼ばれ驚く

「え！？どうして私の名前知ってるんですか！？」

私が心底ビックリした顔で真央ちゃんを見ると、ゆづから聞いてるよ〜、と教えてくれた

「だって、今日お歌見せてくれるんでしょ？」

…ん？

「…誰がですか？」

「Aちゃんが。」

真央ちゃんは、あれ？違ったの？と言うように小首を傾げる

私は真央ちゃんにちょっと待っててくださいね。とだけ言い、どういう事かを聞くために、勢いよく羽生くんへ向かっていこうとした時

「Aちゃん、かな？」

そう言って、テレビでしか見たことの無い顔が2人並んだ

「ぅあ、安藤、せんしゅと、高橋、選手…。」

「結弦から聞いてるよ。歌を聞かせてくれるって言うから来てみた。」

そう言って気さくに笑う高橋選手

そんな高橋選手とはうってかわって、満面の笑みで私を見つめてくる安藤選手

…そ、そんなにじっと見つめられると照れる…

「…結弦にも春が来たのかぁ…。」

私がなんと返せばいいか分からず、目が泳いでいると、そろそろA準備して。という羽生くんの声でハッとする

「ねぇそれ。私聞いてないよ！」

「うん、だって言ったら緊張してやってくれないでしょ？」

…まぁ、やらない。までは行かないと思うけど、ここに来るまで足がガクガクになってしまうだろう

「あとそう、みんながここに居るの、Aの歌聞くためだよ。俺が呼んどいた。」

だからやらないって言う選択肢はないよね。そう言いながら気持ちの良い笑顔でこちらを見てくる

「…意外と羽生くんって勝手だよね。…ドSだし…。」

「そういうAは意外と強情だよね。」

羽生くんと軽く火花を散らしたあと、やるしかない。そう思いながら更衣室へ向かった