氷上のプリンスと目覚めぬ歌姫 (ページ22)

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22話ページ22

「っ羽生、せん、しゅ、」

喘息になりながら、羽生選手に呼びかける

「…あ、Aさん！…ってどうしてそっちから…！しかもこんなになるまで走って…。」

軽く過呼吸になりかけていた私を心配するように、羽生選手がリンクサイドの奥から走ってくる

早く、外にマスコミがいることを伝えなければ

そうは思っても息ができず、苦しさにぎゅっと目を瞑る

「吸入器ありますか？」

羽生選手が、私の背中を擦りながらそう尋ねてくる

あります。そうも答えられず、何度も頷きながら震える手でカバンを探ろうとする

だが、手に力が入らず、なかなかカバンの中を探れない

嫌になる。伝えたいことも伝えられず、羽生選手に迷惑ばかりかけて

「僕カバンの中探っても大丈夫ですか？」

私はコクコクと頷きながら、何とか自分で呼吸を正そうとしてみる

だがやはり、吸入器が無いとなかなか治らない

どうしよう、と不安に駆られていると

「ありました！」

そう言って私に吸入器を渡してくれる羽生選手

お礼を言うのもままならず、ペコペコと頭を下げることしか出来ない

「大丈夫ですから。吸入使ってください。」

その言葉を聞いて、直ぐに吸入器を使う

プシュッという音と同時に、口の中に入ってくる冷気

数分ほどベンチに座っていると、徐々に息が吸いやすくなってきた

「…すみません、ありがとうございました。」

「いえいえ、とんでもないです。」

でも、どうして今日は裏の方から？と聞かれ、重い口を開いた

「…正面の駐車場に、マスコミらしき人達がいて。」

羽生選手は、最初首を傾げ、その後ハッとしたように私に視線を戻した

「…あの黒いワゴン車ですか？」

「それです。多分、ここに羽生選手が出入りしてるのバレたんだ思います…。」

まじかぁ、と言いながら後頭部をガシガシと掻く彼を見ながら、早く答えを聞いてここを離れなければ

そう、思った