氷上のプリンスと目覚めぬ歌姫 (ページ17)

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17話ページ17

普段ならスケート場を出る時は23時や、遅ければ1時まで続くこともあったのに、今日はまさかの21時にスケート場の鍵を閉めた

…これも全部私がやってしまったこと

なのに羽生選手は、優しく「送らせてください」と言ってくださった

断っても水掛け論になりそうなので、有難く送って貰うことにした

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「…さっきは図々しいこと言って申し訳なかったです…。」

もうそろそろで家に着く、という所でやっと私から口を開いた

「…何がですか？」

羽生選手は少し目を見開き、不思議そうに小首を傾げた

「…羽生選手は練習がしたかったはずなのに、私が無理やりやる気を削いでしまったので…。」

本当に、何様なのだろう

出会ってまだ数日の、しかも世界で活躍されている人に

「…僕意外と嬉しかったですよ？」

「…え。」

私が、信じられない。といった様子で羽生選手を見上げると、彼は微笑みながら答えてくれた

「スケーターとしての羽生結弦も、一人間としての羽生結弦も。丸ごと大好きって言ってくださったこと。嬉しかったです。」

あと、ちゃんと治療に専念しないとですね。そう言って、私のことを悪戯っぽい笑みを浮かべながら見つめてくる羽生選手

「…えぇ。だってかっこいいですもん。」

「ありがとうございます。そうやってハッキリ言ってくださるAさんも、とっても素敵な方だなって僕は思いますよ。」

…この人は仏なのだろうか

私が図々しく発言したのにも関わらず、それを嬉しかったと言う彼

そんな私を素敵だと言ってくれる彼

…あぁ。ダメだな

やはり、好きになってしまった

…もう、傍には居られない