氷上のプリンスと目覚めぬ歌姫 (ページ12)

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12話ページ12

「あ、ありがとうございます…。」

「いえ、こんな遅くに女性をお1人で歩かせる訳にはいきませんので。」

そう言って出口で待ってくれていた

「お、おまたせしました…。」

私がそう言いながら、スケート場の鍵をかけ、いつもの場所に鍵を戻した

…でも大丈夫なのだろうか

こんなとこを見られたら、大きな勘違いをされてしまう

その嫌な予想は的中する

「え、ねぇあれ羽生結弦じゃない？」

そんな声が聞こえた方に、バレないように目を向けると、歩道の奥から歩いてくる2人の女性が、私たちを見ながらコソコソと話していた

「…まずくないですか。」

「…ちょっとだけまずいかもですね…。」

どうしてこんなタイミングで…

羽生選手も苦笑いで、その場を足早に去ろうとした時、女性の方からカメラの音が聞こえた

さすがにまずい、と思った私は、勢いよく羽生選手の腕にしがみついた

「…えっ？」

「…すみません羽生選手、私に合わせてくださいね。」

私が小声でそう言うと、羽生選手は最初こそ驚きはしたものの、すぐにこくりと頷いた

「…ほんっと"佐藤くん"って羽生選手に似てるよね〜！すっごいかっこいい〜！」

私のその言葉をすぐに理解してくれた羽生選手は、言葉を続けた

「そうかな？自分ではあんまり思わないけど…、でも確かによく"間違われる"かも。」

羽生選手も、少し声のトーンを下げてくれた

私がその言葉をニッコリとしながらでっしょ〜？などと言うと、2人の女性は「そっくりさんにしてはすごい似てるね」「なんだスクープだと思ったのにー」などと言葉を交わしてどこかへ行ってしまった

女性達から見えないと確信した辺りで、勢いよく羽生選手の腕を離し、すぐに謝罪した

「す、すみません…！即興とはいえ…。」

「いえ、助かりました。ありがとうございます。」

そして、私に軽くペコッと頭を下げると

「…では、道案内をお願いします。」

と言って優しい笑みを見せてくれた