氷上のプリンスと目覚めぬ歌姫 (ページ11)

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11話ページ11

最後の歌詞を歌い終わり、安心したのか、足の力が抜けてしまい、リンク上に座り込んでしまう

…はずかしい。そう思いながらも、喘息で息ができず、喉からヒューヒューと嫌な音がする

「…やっぱり素敵です。」

そう呟いた羽生選手はいつの間にかリンクに上がってきていて、私の肩を支えながら、「息を吐くことに集中して」と落ち着かせてくれた

「…も、もうし、訳、ない。です。」

「僕もよくこうなるので、大丈夫ですよ。」

私に気を遣わせないようにそう言いながら、わざわざベンチまで連れてきてくれた

「無理をさせてしまって申し訳ないです。」

羽生選手から、深く頭を下げられる

「え、いや大丈夫ですから！頭をあげてください！」

申し訳なさそうに顔を上げる羽生選手

「練習を見せてくださったお礼とでも思ってもらえれば…。」

私がぎこちない笑顔を浮かべれば、なんとか羽生選手も微笑んでくれる

「…あ、そろそろ23時ですね。それじゃあ僕ここら辺で帰りますね。また明日。」

私が、はいまた。と返すと、荷物をまとめて出口へ向かう羽生選手

と、出口へ向かう足をピタと止めて、またUターンしてこちらへ戻ってきた

なにか忘れ物でもしたのだろうか。そう思い自分も帰る準備を始めると、羽生選手が私の近くに来た

「…気が付かなくてすみません。こんな時間なのに…。」

…？なんの事だろうか

なんの事ですか？そう言おうとした時だった

「ご自宅の近くまで送ります。」

…私は開いた口を閉じることが出来なかった