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「…なんでここに連れてきたの」
『んー、特に深い意味は無いけど』
Aは何か言葉を探すように瞬きを繰り返して、白い息を吐いた。
ため息……かどうかは分からない。
聞かない方が良かったか、Aが話し出すのを待った方が良かったのかもしれない。
ミスったなぁ、とぼんやり考えていると、Aはまた一口ミルクティーを飲んで、「あー」と真っ暗な空を仰いだ。
『ちょっと聞いてくれる?』
「うん」
『あのねぇ、ちょっと真面目な話。自分が分からなくなったらここに来るんだぁ。一人で。』
「…そうなんだ」
『うん。どうしてもきつい時だけ、ここでリセットするの。煩くもないし、人通りも少ないし、いい所でしょ。まぁ、少し危ないかもしれないけど。』
ふにゃりとした笑顔を零しながら、Aは言う。
俺からしたら、人通りが少ない夜の公園なんて危険すぎる。
でも、ここがAの唯一の場所なのだとしたら、何も言えない。
『ここに居たら、私になんて誰一人見向きもしない。一人になりたい時はここって決めてるの。航平にはいつか教えようと思ってた』
相変わらず空を見上げたまま。
その横顔は、我が双子ながら美しいと思う。
どうして俺に教えようと思ったのか、ただここがいい場所だからという簡単な理由ではない。
Aは英明だから、きっと何か別の理由があるに違いない。
でも、それを聞いても教えてはくれないだろう。
「俺もここに来ていい?」
『…いいよ』
「一人になりたい時はここに来るといいよ」と付け足して、ミルクティーをまた一口。
都心の眩しい光を眼下に、負けじと瞬く星になんとなく目をやった。
冷たい風がびゅっと吹いて、たくさん着込んでいるはずの僕らの体温を奪っていく。
あんなに暖かかったココアももうすっかり冷えきって、全然美味しくない。
…けど、なんとなく心はじんわりと暖かくて。
『さむっ。帰ろ』
「えっ、もう帰るの?!」
『だって寒いもん!おでん食べたいー』
「じゃあコンビニ行こ〜」
『ええよ。セブン行こか』
Aのエセ関西弁に吹き出すと、「川上さんの真似、上手い?」なんて。
そうでもないよ。
にまにま笑いながらマフラーに首をうずめるAは、すっかり元気そう。
あの悲しそうな顔が嘘みたいだった。
******
星が赤くなりました……!!!
ありがとうございます( ;⌄; )
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tuki(プロフ) - 更新がんばってください (2020年3月30日 22時) (レス) id: 5c1a883167 (このIDを非表示/違反報告)
ヒイラギ(プロフ) - シャノさん» あけましておめでとうございます!ありがとうございます(;; )今年も何卒宜しくお願い致します! (2020年1月3日 18時) (レス) id: 4b5b27727e (このIDを非表示/違反報告)
シャノ(プロフ) - あけましておめでとうございます!これからも、ファンの一人として陰ながら応援させていただきます。頑張ってください! (2020年1月1日 11時) (レス) id: b2bfb3614c (このIDを非表示/違反報告)
ヒイラギ(プロフ) - 現実逃避あるふぁさん» ありがとうございます!前作でもコメント頂けて嬉しかったです^^* 引き続き宜しく御願い致します! (2019年11月16日 17時) (レス) id: 4b5b27727e (このIDを非表示/違反報告)
ヒイラギ(プロフ) - あさみさん» ありがとうございます!わー、双子さんなんですね!素敵です´`* ぼちぼちですが更新頑張ります! (2019年11月16日 17時) (レス) id: 4b5b27727e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヒイラギ x他1人 | 作成日時:2019年11月15日 23時