TWINS･TWINS

･31 ページ31

side fukura




「あ、また怠惰Aちゃんになってる」

『ふくらさんだ〜こんにちは』






オフィスに行ってみると玄関にCONVERSEの靴が綺麗に揃えてあって、Aちゃん来てるんだな〜と思ってたら案の定ソファでだらりと横になっていた。



すっかり心を許されているのか、起き上がることもせずひらひらと手を振りながら挨拶をされて、俺もそれに応えるように手を振る。



Aちゃんは校閲だったり企画考案だったり、仕事をする時はしっかり仕事をこなして、怠ける時はとことん怠ける。


オンとオフがはっきりしていて、少し俺と生態が似てると思う。




今は完全にオフで、こうなったAちゃんはなかなか体を起こそうとしないことも知ってる。






「飲み物いる？」

『いただきます！』





怠惰になったAちゃんに献身的になってしまうのは、もはや癖だ。


こうちゃんには「あんまり甘やかさないでください！」なんて言われちゃったけど、癖だから仕方ない。

うん、仕方ない。






コーヒーにミルクをたっぷり入れて仕上げに蜂蜜を少しだけ。



マグカップを渡すと「いい匂い」と笑ってそれに口をつけた。







「次の企画でさ、ナレーション付けたいんだけど…Aちゃん出てみない？」

『声だけ出演ってことですか？』

「うん、そうそう」

『いいですよ〜』






きっとコメント欄にデスボって書かれますけどねとケラケラ笑う。

いやいや、鈴を転がすような声なのに何を言う。




だらけるAちゃんの横に座って、パソコンを広げて編集作業をしていると隣から欠伸をする声が聞こえた。






『すみません、ちょっとだけ寝ますね…寝相悪いんで、蹴っちゃったらごめんなさい』

「うん、おやすみ」






うーん、と猫のように伸びをした後にきゅっと丸まって、暫くするとぐっすり眠ってしまった。


寝ているのにスマホを握りしめている所は現代っ子だなぁ。






こうちゃんとオフィスで喧嘩をして以来 無理をしないようになって、たまにこうして猫みたいに昼寝してる。



仕事の効率は悪くなるどころか逆に良くなってる。

うん、実にいいことだ。




…寝顔も見れちゃうし。

･32→←･30

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す