親離れ ページ5
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「待てって」
「帰ろって言ったり待てって言ったり何なの」
「ちゃんと話そう」
「話すことないじゃん」
「俺はあるから」
「私はない」
井上の言うことを全否定しながらスタスタと歩いていく日南。
日南の腕を掴んだ井上は、無理矢理止まらせて自分の方を向かせた。
「じゃあ話さなくていいから。聞くだけでいいから」
「……なに」
「ごめん、この前はひどいこと言って」
「もういいって」
「頑張って練習したのに、ごめんな」
そう言って頭を撫でる。
涙脆い日南は、それだけで泣きそうになって下を向いた。
「Aがバク転出来るようになったことに怒ったんじゃなくて、秘密にされてたことが悔しかっただけ。何で琳寧なの、メンバーは俺なのにって思っちゃって。ごめんな？」
「…ん、」
「俺の知らないところで成長していくのが怖いの。A、何でも出来ちゃうから。俺らの知らない所でめっちゃ努力して大きくなってって、俺ら置いてかれるかもって」
「………置いてかないよ、」
「うん、そうだよな、ごめん。あと何が嫌だった？」
自分の非を全て認め、何度も何度も謝る井上。
何でこんなに自分は子供なんだろうと自己嫌悪に陥りそうになるが、嫌な所を聞いてくれる井上に、少し甘えることにした。
「バク転、危ないからダメって言われたの嫌だった」
「…うん、Aそういうの嫌がるもんな」
「女の子とかそういうのナシで見て欲しい」
「そうだよな、ごめん。でも、俺らがほんとにAのこと大切で大好きなのは分かって？」
「分かってる、」
「ふは、そっか、分かるよな」
そう笑って頭を撫で、まだある？と聞いてきた井上。
首を横に振ると、今日飯行くか！と笑ってくれた。
今度は首を縦に降り、頭の上にある井上の手を握った。
目を丸くした後その手をぎゅっと握った井上は、日南の手を引いて楽屋へ向かった。
日南の親離れも案外近い、いや、もう終わったのかもしれない。
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作者名：まれぴゅま
| 作成日時：2020年2月24日 11時
