. ページ3
だから、高校二年になった今、私は限界だった。
祖母が亡くなった世界では生きる希望もなく、何かを言われても心に言葉が突き刺さるだけだった。言い返すことが出来なくなり、まともに声を出すことすらままならなくなった。それでも病院に行くお金なんてどこにもない。帰ってきても部屋が暗い。いい匂いのする夕飯を作って待ってくれていた祖母は、本当に突然、私の隣からいなくなってしまった。
この時私は本当に、独りになったのだ。
身体だけは動くので、喧嘩ばかりをする日々だった。ただ無気力に生きていた。ずっと私の人生は、あの日、祖母が亡くなった日から止まっている。部屋に掛かっている色褪せたカレンダーが、祖母が亡くなった七月のまま、手がつけられないでいる。
私は薄々感じていた。
この世界は、私には向いていない。
だから、私は 自 殺 をすることにした。
虐められるだけの、つまらない人生に終止符を打つことにしたのだ。先の見えない人生を歩くことがどれだけ無謀であるかに気がついた。光の破片さえ存在しない私の道に、明るい将来が待っているとはとても思えなかった。
すると決めたら、ストンと何かが腑に落ちた。きっとこれが、正解だったんだと思う。せめて少しぐらいは優雅に死にたいと思ったから、私は私の一番好きな場所から飛び降りることにした。
住んでいるアパートから近い崖。祖母が生きている時はよくここに連れてきてもらっていた。とにかく景色がいいのだ。昼は街全体を見下ろすことができるし、夜になればあたり一面は満天の星に包まれる。よく祖母と流星群を見に来たものだ。私はこの場所が大好きだった。
｢……ぁ、｣
マンションから出ようとしたとき、ふと部屋を見渡すと、アコースティックギターが視界に映った。八歳の誕生日の時、祖母から貰ったものだ。
初めて貰ったプレゼントだった。嬉しくて嬉しくて、抱え込んで寝るほどだった。
"そんなに抱えなくても無くなりゃしないよ"
そう言って楽しそうに、嬉しそうに笑うあの頃の祖母が好きで、それが今の私には必要だった。
｢…｣
私はギターケースにギターをいれ、背負い、マンションを出た。
鍵をする。そしてそのまま、二度と帰ってこないであろう場所を背に、静かに俯いた。
頬にあたる風が冷たい。まだ二月だから当たり前か、そう思って息を吐くと、白い息が見えた。
もちろん未成年なので車には乗れない。ゆっくりと最後の道を、私は歩きだした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 556人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
C(プロフ) - メイさん» ああああ、ありがとうございます！そんなに見て頂けて嬉しい限りです…。ギターは、少し齧っている程度ですがやっています！楽しいですよね。さて、そろそろ物語も終わりが近いはずです。続編に行きますが、ぜひ最後まで見届けてやってください！！ (2021年8月26日 22時) (
レス) id: 8ce42dbb4b (このIDを非表示/違反報告)
メイ - 作者さんの作品大好きです!!シリアスな感じがめっちゃドストライクで…悶えながら見てますw作者さんはギターやってらっしゃるんですかね…?ギター楽しいですよ!!!ストレス発散にもなります^^これからも応援してます!長くてすいません…頑張って下さい!! (2021年8月25日 1時) (レス) id: c7b86b77aa (このIDを非表示/違反報告)
C(プロフ) - そるとさん» ペ神の口調が全く分かりません！もう諦めました！(おい) いつも見てくれてありがとうございます！これからもぜひよろしくお願いします！！ (2021年8月18日 7時) (レス) id: 8ce42dbb4b (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - しんぺい神さん､､､！！！！いつも見てます！！！更新頑張って下さい！！ (2021年8月17日 18時) (レス) id: becfda2b7c (このIDを非表示/違反報告)
missa - Cさん» ikebodato？saikoujixyaneeka(読みづらくてすんません)更新頑張ってくだせぇ続き楽しみっす (2021年8月11日 15時) (レス) id: 2eb1ed3a12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：C | 作成日時：2021年8月4日 11時
