. ページ11
｢Aさんは、なんで自 殺したんですか？｣
『ぇ、』
食堂に向かって歩いている途中、なんでもない普通の質問をするように、チーノが私に言った。
自 殺したことは此奴らに一言も言っていないはずなのに、と、内心焦りながら記憶を辿ると、思い当たる節を一つ見つけた。
最初の独り言が聞かれてしまっていたのだろう。
『…』
口に出すべきじゃなかった。今までそういうのに関しては徹底してきたはずなのに、どうにも気が緩んでいたみたいだ。
小さく溜息をつく。途轍もなくめんどくさいものを聞かれてしまった。他人の独り言を聞くなよ、と横暴な考えをしても伝わるわけもない。
本当に最悪だ。どうして私はあの時。
また自分に苛立つ。最近はずっと、腹が立ってばかりだ。
｢教えてくださいよ〜｣
静かな廊下に彼の声だけが響いていた。
『……なんとなく、だよ』
結局私の口から零れたのは、そんな言葉だった。
なんとなくで自 殺する人なんて流石にいないだろうし、随分と幼稚園児が答えそうなものを言ってしまったなぁと思う。なんとなくだけで死ねるような勇気を、きっと人間は持ち合わせていない。 私だから、分かる。
彼は信じていないだろう。そりゃそうである。
メガネ越しの両目の、探るようなその視線が痛くて、逃げるように廊下を歩く足に集中する。私にだけのしかかる重い空気に潰されてしまいそうで、死にたいのに、一生懸命息をした。
そして暫くして、漸く食堂についたみたいだった。
｢ほら、着きましたよ｣
『…』
目の前には、無駄にでかさを象徴している扉。
｢…入らないとご飯食べられへんよ？｣
『…、』
彼は私にそう言った。
思いかえせば、最近まともに食事すらしていなかった。
一日一食あるかないか程度。私のご飯といえばインスタントぐらいであり、インスタントを食べすぎて慣れてしまった私の舌は、それをもう美味しいと感じることはなくなっていた。だから別に食欲は湧かなかったし、一日飲み物だけで生きていくこともできた。実際そうやって過ごしていたこともあった。
扉の向こうに、美味しそうな匂いが漂っている。なんだか懐かしくて、胸が苦しくなった。祖母がご飯を作って待ってくれていたあの日々が、少しだけ脳裏によぎって痛い。
｢ほら、行きますよ｣
『…ぅ、ん』
出来るだけ目立たない端のほうに座ろうと決めて、チーノが開けた扉に足を踏み入れた。それでも足はどこか、まだ重いままだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 556人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
C(プロフ) - メイさん» ああああ、ありがとうございます！そんなに見て頂けて嬉しい限りです…。ギターは、少し齧っている程度ですがやっています！楽しいですよね。さて、そろそろ物語も終わりが近いはずです。続編に行きますが、ぜひ最後まで見届けてやってください！！ (2021年8月26日 22時) (
レス) id: 8ce42dbb4b (このIDを非表示/違反報告)
メイ - 作者さんの作品大好きです!!シリアスな感じがめっちゃドストライクで…悶えながら見てますw作者さんはギターやってらっしゃるんですかね…?ギター楽しいですよ!!!ストレス発散にもなります^^これからも応援してます!長くてすいません…頑張って下さい!! (2021年8月25日 1時) (レス) id: c7b86b77aa (このIDを非表示/違反報告)
C(プロフ) - そるとさん» ペ神の口調が全く分かりません！もう諦めました！(おい) いつも見てくれてありがとうございます！これからもぜひよろしくお願いします！！ (2021年8月18日 7時) (レス) id: 8ce42dbb4b (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - しんぺい神さん､､､！！！！いつも見てます！！！更新頑張って下さい！！ (2021年8月17日 18時) (レス) id: becfda2b7c (このIDを非表示/違反報告)
missa - Cさん» ikebodato？saikoujixyaneeka(読みづらくてすんません)更新頑張ってくだせぇ続き楽しみっす (2021年8月11日 15時) (レス) id: 2eb1ed3a12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：C | 作成日時：2021年8月4日 11時
