Story103 ページ21
京都から帰ってきて、数日。その日は珍しく、Aと灰原での任務だった。
「雄!そっち行ったぞ!」
「任せて!」
山奥にあるトンネル。そこに出る呪霊の討伐。準二級のそいつは、Aだけでも討伐できるようなものだった。不足の事態に備えて、バックアップとして灰原がついていくことになっただけ。学生であるからという理由の、万が一の保険だった。実際についてみれば、他の呪霊の気配もなかった。
「うし、終わったな」
「そだね!Aが的確に指示出してくれて、助かったよ!僕も早く、二級になりたいなぁ」
「その前に雄は、準二級に上がらねーとな」
ピックアップを頼むために携帯を取り出したAの横で、そうだね、と苦笑をした灰原の表情が真剣にになる。
「ピックアップ、十分くらいかかるってよ。もうちょいかかると思って、一度麓に戻ったそうだ」
「そっか。…じゃぁちょうどいいや。話があるんだ、A」
戦闘終了後から目を合わせようとしなかったAの視線が、その声音に灰原を捉えた。
「僕、ずっと考えてた。なんでAはあんなに怒ったのかって。謝ろうとしてもそのタイミングすらくれないでしょ。だからなんでだろうって、いっぱい悩んだんだ」
「ふーん」
「でも僕、どうしてもわからなくてさ。結局夏油さんに相談しちゃった。そうしたら言われたんだ。なにを怒られたのかじゃなくて、なんで怒ったのか。それを理解しないうちは本当に謝ったことにならないんじゃないかって」
「…傑さんらしい解答だな」
「あの時僕は、一度会っただけの先輩の死に悲しんだよね。そうしたらAが怒った。最初は、僕が死ぬ覚悟がないって思われたのかなって思ったんだ。でもよく考えたら、違った。Aは僕が、誰かを犠牲にしても生き抜く覚悟がないから怒ったんだなって、思った。…そして、その考えすら違った」
「なんで」
「だって言ったでしょ」
『オマエだけじゃなく、仲間を殺したくねぇなら、なおさらだ』
「僕にその覚悟があるのは前提なんだよね。弱肉強食の世界であることも、大前提だ。それでも僕は、Aは、七海は、仲間を守りたい。でも僕が誰かの死にいちいち涙を流すほど心を揺らして表面に出していたら、仲間を守るどころか仲間を殺す隙になる。…だから、Aは怒ったんだ」
(誰かの命を優先する覚悟ではなく)
(生きてともに歩く覚悟を)
(死なせない、覚悟を)
(僕は持っていなかった)
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灯霧(プロフ) - 森さん» 応援ありがとうございます!また七海夢書くと思うので宜しくお願い致します! (2022年2月28日 0時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
森 - YouTubeのはきっと、千葉茉吏衣というアイコンの人だと思います。 これ面白かったです❗応援してます‼ (2022年2月25日 0時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
福寿茶寮(プロフ) - 灯霧さん» YouTubeでも似たようなコメントをみた事がありまして,もしかしてと思ったのですが,そうだったんですね…。 ありがとうございました。 (2021年12月22日 21時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 福寿茶寮さん» 申し訳ございません!私が気づいてなかったばっかりにご不快な思いをさせてしまいました。報告し非表示にしてあります。あの人はどこの七海夢にも出没するアラシみたいなものです。今後も見つけ次第非表示にいたします。お手数をおかけいたしました…! (2021年12月22日 15時) (レス) id: 659f7a97b9 (このIDを非表示/違反報告)
福寿茶寮(プロフ) - マリイ(七海建人の嫁)さん» 変な事書くのやめて下さい。 (2021年12月22日 11時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯霧 | 作成日時:2021年8月3日 16時