Story325:伊黒side ページ38
伊黒は目の前の光景にキョトンとしていた。
「実は、かねてから鏑丸と遊んでみたかった」
相棒と楽しそうに戯れ合う輝利哉という、想像もしなかった光景に驚いているのだ。そんな伊黒を気にする様子もなく、鏑丸はツンツンと突っついてくる輝利哉の指にくるくると絡みつく。スルスルと体を登って首に巻き付いた。
「ふふ、いい子だね鏑丸」
「っ、鏑丸…!お前、失礼だぞっ!」
「いいんだよ、小芭内。彼はとても賢いね」
小さな額を撫でれば気持ちよさそうに体を揺らす鏑丸を一通り愛でた後、輝利哉は改めて伊黒に向き直った。
「こちらでの生活はどうかな」
「…不自由はありません。Aは良くやってくれています」
最初はなんだこの小娘は、としか思っていなかったが、伊黒は彼女のことを認めている。それがわかったのか、輝利哉も嬉しそうに笑った。
「小芭内の人を見る目は確かだと、父も言っていた。…でもあまり、いじめすぎてはいけないよ」
「…いじめてなどおりません。あいつがバカなのです」
「ふふっ、そういうことにしておこう。…それで小芭内はどうするんだい?」
「甘露寺のそばにいます。それが俺の望みです」
打てば響くような即答は、いっそ清々しいほどだ。キッパリと言い切った伊黒に、彼は頷く。
「小芭内は以前から、蜜璃が大好きだね」
「…彼女ほど眩しい人間を、俺は見たことがありませんでした。こちらに来てから…小癪ですがAもそういう人間なのだと、知りましたが」
人を疑うことを知らないのだろうか、と思うくらい他人を信じて、他人に心を開く。最初は刀で脅した相手に、彼女は告白された後の相談をしてくるのだ。おいお前、と突っ込んでやりたくもなるし、その危なっかしさを放っておけないとも思う。
「蜜璃は、こちらに残りたいそうだよ」
「ならば俺もこちらに。ついでに多少、あいつのことも見てやってもいい」
「ふむ…。小芭内の気持ちが気になるね」
「というと?」
瞬きをする彼に、輝利哉は笑う。
「蜜璃に対する気持ちは恋だろうし愛だろう。…Aさんに対しても同等のように、私には聞こえたんだ。愛にはいろんな種類があるから、見極めを誤らないようにね」
「俺が甘露寺よりあいつを優先することなど」
「必ずしも優先というわけではないだろうけど…小芭内、何にせよ幸せになるんだよ」
「…御意」
(甘露寺のそばにいる以上に)
(幸せなことがあるのか?)
(あいつと甘露寺が同等?)
(そんな馬鹿な)
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灯霧(プロフ) - シンヤさん» コメントありがとうございます。いまとてもバタバタしているのですが必ず更新いたします! (2022年7月19日 21時) (レス) id: e0bf1f0d56 (このIDを非表示/違反報告)
シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています (2022年7月14日 2時) (レス) @page47 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - pppさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて光栄です!この先をどう進めていこうかというなは決めているのであとは書く時間だけなのですが…なかなか難しくて申し訳ありません。でも最後までやりますのでお待ちください! (2022年5月23日 14時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
ppp - この作品が好きで最初から何度も読み返してます。更新、なかなか大変かと思いますが、続きを楽しみにしております。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: f728de7b66 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - むるさん» ありがとうございます、励まされます! (2022年3月28日 21時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯霧 | 作成日時:2021年12月4日 15時