Story324:甘露寺side ページ37
右に左に。視線を泳がせる彼女から近況を聞いた後、輝利哉は静かに尋ねた。
「蜜璃はこれから、どうするんだい？」
「あの…そのぉ…」
言い淀む様子に、きっと決めかねているのだろうと想像がつく。だが、決断の時はすぐそこだ。
「蜜璃。君はいい意味でも悪い意味でも、優しい。だから人の良いところをすぐに見つけられる。…でも君自身は？人のことばかりに気をやっていては、自分を好きになれない。君自身のために、そろそろ決めなければいけない時なのではないかな」
「…は、い」
「君はどうしたい？何がしたいんだい？」
静かに、穏やかに問いかける。彼女には、それが必要なのだ。生まれ持った身体能力が故に人生を翻弄され、鬼殺隊に行き着いた甘露寺は、自分自身のやりたいことをやれる時間があまりにも少なかった。恋をするために鬼殺隊に来たというある意味自由すぎる入隊理由だが、その裏には家族への遠慮や謝罪もあるのだ。だから、鬼殺隊という枠にとらわれず生きられるようになった今こそ、ちゃんとその辺りを考えてほしい。
「…こちらの世界は色とりどりで、とても華やかです。美味しいものもいっぱいあります。…それに、友達もいます。私、わがままを言っていいでしょうか…？」
「もちろん。君は甘露寺蜜璃だ。恋柱じゃない」
「っ…！私、しのぶちゃんやAちゃんと離れたくないです！でも、伊黒さんたちと別れるのも…いや、ですっ…」
「そうだね…別れは辛い。でも、その先にお互いの幸せな未来があるとしたら、その別れも少しは明るいものになるのだと、私は思うよ」
「…輝利哉様…」
「私は、蜜璃が蜜璃らしく輝いていられるのなら、どちらの世界で生きたっていいと思う。…君は、どう思う？」
「っ、私！可愛い装飾品を作っているんです！結構評判が良くて、リピート…再注文してくれる方も、多いんです！」
「うん」
「Aちゃんを放っておけません！Aちゃんは、大変な時に私たちを支えてくれました！今度は私が、Aちゃんを支えるんです！」
「いいと思うよ」
「輝利哉様！私は、こちらの世界で生きます！」
「わかった。これからも、お互い幸せであることを祈るよ」
「はい！」
(私の迷っている背中を押してくださって)
(私より年下なのに、そうは見えないくらいしっかりしていて)
(でも笑顔は子供なんだなぁって思うくらいの幼さだった)
(そんな輝利哉様は、とてもお優しいから)
(私もその優しさを、彼女に伝えたい)
Story325:伊黒side→←Story323:冨岡side
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灯霧(プロフ) - シンヤさん» コメントありがとうございます。いまとてもバタバタしているのですが必ず更新いたします！ (2022年7月19日 21時) (
レス) id: e0bf1f0d56 (このIDを非表示/違反報告)
シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています (2022年7月14日 2時) (レス) @page47 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - pppさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて光栄です！この先をどう進めていこうかというなは決めているのであとは書く時間だけなのですが…なかなか難しくて申し訳ありません。でも最後までやりますのでお待ちください！ (2022年5月23日 14時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
ppp - この作品が好きで最初から何度も読み返してます。更新、なかなか大変かと思いますが、続きを楽しみにしております。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: f728de7b66 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - むるさん» ありがとうございます、励まされます！ (2022年3月28日 21時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2021年12月4日 15時
