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Story320:胡蝶side ページ33

「正直、複雑な気分です」


挨拶を済ませ、こちらの世界での暮らしについて尋ねられた胡蝶は、己の気持ちを素直に言葉にした。


「なぜだい?」
「私は一度死にました。ええ、間違いなく。他にあの決戦で、時透くん、玄弥くん。それ以前の戦いで、煉獄さん。なぜ私たちが選ばれたのか、自称神の話で一応理解しています。…輝利哉様は、そのことを?」
「把握しているよ」
「では、わかるのではないでしょうか。…私たちの世界への貢献度、人生の不幸度?そんなものを勝手に測られ、しかも私たちがたまたま活躍する物語だったから私たちへの同情が集まった?…冗談じゃありません。なぜ姉さんではないのですか」


最初にその話を聞いた時、真っ先に思ったこと。それがこのことだ。死者が蘇るのなら、なぜ自分なのか。既刊は読んだが、カナエが出てこないなんてことはなかった。ただ、語られる量が少なかっただけ。たったそれだけの。


「私はそれが、理不尽に思えてなりません。何が自称神ですか。神なんて烏滸がましい。神ならもっと平等であれと思います」
「…確かに、そうだね。私もその気持ちはわかる」


怒りすら感じる言葉に、輝利哉は静かに同意する。彼だって、父を、母を、姉たちを亡くしているのだ。はっとした胡蝶が、頭を下げた。


「申し訳ありません。感情的になりすぎました」
「いいと思う。しのぶは本来、そういう気質なのだと聞いているしね」


ふふ、と笑って見せれば、彼女の緊張が少し解けた。


「それでも、私は君がここに来てくれてよかったと思う。…カナヲは元気だよ。炭治郎に禰󠄀豆子、善逸や伊之助と共に行動している。アオイと、すみ、きよ、なほも元気だ。蝶屋敷をそのまま診療所にするそうだよ。…みんな、前を向いて歩き始めた。しのぶもどうか、そうあってほしい」
「…私は、こちらの医学を習得しようと思っています。それを、Aさんも応援してくれましたから」
「いいことだと思うよ」
「輝利哉様。私は汚いです。汚い感情を吐いて貴方に許してもらうことで、私がここにいてもいい理由を探しているんです」
「しのぶは頑張り屋で真面目だから、そう考えてしまうかもしれない。でもそれは、どんな人間でも同じこと。…どうか、これから幸せに暮らせますよう、心から祈っています」


(ふんわりとしているのに)
(どこか芯のある微笑み)
(お父上に…お館様にそっくりで)
(その時ようやく、私は鬼殺隊である事を卒業できた)

Story321:玄弥side→←Story319:煉獄side



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灯霧(プロフ) - シンヤさん» コメントありがとうございます。いまとてもバタバタしているのですが必ず更新いたします! (2022年7月19日 21時) (レス) id: e0bf1f0d56 (このIDを非表示/違反報告)
シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています (2022年7月14日 2時) (レス) @page47 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - pppさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて光栄です!この先をどう進めていこうかというなは決めているのであとは書く時間だけなのですが…なかなか難しくて申し訳ありません。でも最後までやりますのでお待ちください! (2022年5月23日 14時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
ppp - この作品が好きで最初から何度も読み返してます。更新、なかなか大変かと思いますが、続きを楽しみにしております。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: f728de7b66 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - むるさん» ありがとうございます、励まされます! (2022年3月28日 21時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灯霧 | 作成日時:2021年12月4日 15時

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